「植物はどうして開花時期を知るの?」
 5月から6月にかけ、六ヶ所村は最も花の豊かな季節となります。ホオノキは大輪の白い花を咲かせ、トチの大木も天井にお花畑を形成します。木々を覆ってフジが花盛りとなり、海岸にでてみると、砂丘には赤紫のハマエンドウや黄色のセンダイハギが咲き乱れます。やがて、尾駮沼や鷹架沼などの湿地帯にはニッコウキスゲが次々に花をつけ始め、六ヶ所村の夏が始まります。
 野山の植物は、毎年同じ季節に同じように花を咲かせます。春にハマギクが、秋にコブシが白い花を咲かせるということはありません。当たり前のようなことですが、考えてみるとこれは不思議なことです。植物はどのようにして花を咲かせる時期を知るのでしょうか?

〔花芽の形成〕
 植物が花を咲かせるためには、花の基となる花芽(正確には花の原基)が形成されなければなりません。花芽が成熟して花となるのです。花芽ができるためには、まず植物体が十分に成長していなければなりません。花はタネをつけるために咲き、タネをつけるためには植物が十分なエネルギーを貯めておく必要があるからです。しかし、花を咲かせる多くの植物は、十分に成長しても、適当な環境条件が与えられなければ花芽をつけることができません。この条件として特に重要なものが日照時間と気温です。

 
 

※ハマエンドウの群落

 

〔日照時間と花芽形成〕
 花芽の形成と日照時間との間には、ある種の関係があり、1日の日照時間(日長)がある長さ以下になると花芽を作り始めるものは短日植物、日長がある長さ以上になると花芽を作るものは長日植物、日長と花芽形成とに明確な関係がないものは中性植物と呼ばれます。各々の例は表にまとめました。しかし、植物の中には、短日の次に長日がくることが必要なものあるいはその反対のものがあるなど例外も多くあります。

表1 日長による分類
短日植物
中性植物
長日植物
アサガオ
スイセン
キキョウ
オナモミ
ユキヤナギ
マツヨイグサ
キ ク
アジサイ
ハコベ
カタバミ
コデマリ
ケ シ
ツバキ
チューリップ
フヨウ
コスモス
バ ラ
ハナショウブ
ホウセンカ
パンジー
ヤグルマソウ

 花芽から開花までの期間は気温等によって影響を受けますが、一般に花芽ができれば日長とは無関係に開花します。日長により花芽形成が調節される植物は、1年の特定の時期(長日植物では初夏がら夏、短日植物では晩夏から秋)にのみ開花することとなります。

 
 
※写真1(左) ニッコウキスゲ    ※写真2(右) センダイハギ
 

 

〔気温と花芽形成〕
 花芽の形成には、日長の他に、気温も関係しています。多くの多年性植物(二年性を含む)では花芽が形成されるために、数日から数週間、低温にさらされる必要があります。すなわち、冬を経験しなければならないのです。その後、長日条件(すなわち春)が与えられて花芽ができます。また、茎や枝にできた花芽が成熟し、開花するためにも気温が関係します。サクラのように春に咲く多くの花は、つぼみができても暖かくならないと開花できません。
 多くの植物は、日照時間と気温の変化に応じて花芽を分化・成熟させ、あたかも咲く時期を知っているかのように花を咲かせるのです。
(松本 恒弥)

 
   
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