(財)環境科学技術研究所 所長 大桃 洋一郎

 もう25年以上も前のことになります。5オになった長男は、私をつかまえると「なぜ…」を連発したものです。「なぜ赤い花と白い花があるの」、「なぜ猫は寒がりで犬は寒がりでないの」、答えるのに困ったことを思い出します。多くの父さんお母さんもきっと同じ経験をなさったと思います。大人になるにつれ、なれっこになってしまうのか、身の廻りのことにあまり疑問を抱かなくなってしまう傾向があります。仕事の手を休め、夜空を仰ぎ、まわりを見渡し、また新聞やテレビの映像の中からも素朴な「なぜ」を発見し、その答えを調べてみようというのが、この「環境研ミニ百科」をつ<るきっかけです。 御一緒に「なぜ」を探してみませんか。

 

 

●環境研とは…
環境科学技術研究所、略して環境研は、科学技術庁傘下の研究所(財団法人)です。
 環境研では、
1)自然環境の中で物質がどのように動いていくかを調べる研究。
2)青森県内の場所による放射線の強さの違いや、放射線を出す物質(放射性物質)の分布状態を調べる研究。
3)人間を含む生物に対する放射線の影響を調べる研究。
4)先端技術の開発。
5)地域産業の発展に役立つような研究などを行うため、平成2年12月に六ヶ所村につくられました。ようやく一人前になりつつある…新しい研究所です。私たちは、いつも「科学的真実に忠実、公正中立」をモットーに、研究を続けています。

環境研には、平成5年3月に完成した、本館(事務・研究棟)があり、平成7年3月には、二つの大きな研究施設が完成します。

 
 

平成7年3月には、施設のうち植物を育てる部分(閉鎖系植物実験棟)が完成します。

 

 自然環境の中で、土、水、大気などに含まれる物質が、どのように動き、生物にとり込まれ、どのような影響を与えるかを調べるには、実際の自然環境を、直接相手にすることが重要です。しかし、いつも変化している自然環境の中で、物質の動きを調べたり、生物に与える影響を調べるのは、むずかしい面もあります。
 このため、環境研では、物質の動きに影響を与えそうな環境条件(例えば気温)を調節し、生物を長い期間育てる施設を作って実験をしょうとしています。
 施設では、動植物を別々の部屋で育て、最先端の技術を使い、中の物質が外へ逃げ出さないような工夫がされています。
 地球の誕生の時から自然環境の中にある放射線を、私たちは毎日あびて生活をしてきました。
 生物がたくさんの放射線をあびると、死ぬこともあり、病気になることもあります。弱い放射線を少しあびた時には、影響がないといわれていますが、それを確かめるための大規模な研究はあまりされていません。
 環境研では、きわめて弱い放射線をハツカネズミ(マウス)に長い時間あてた時の影響を調べる研究を行います。このため、全体で、約5,000匹のマウスに放射線をあて、飼育できる施設(低線量生物影響実験棟)を建設中で平成7年3月には完成します。
 施設では、病原菌を持たない特殊なマウスを使い、外から病原菌が入りこまないような工夫がされています。
 
   
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