青森市にある三内丸山遺跡では沢山の考古学的遺物が発見されています。これらのうち特に目につくのは土偶や土器の多さです。三内丸山の展示館では表面に縄目の模様がある一つ一つの破片をつなぎ合わせて縄文式土器を復元する作業を見ることが出来ます。それでは実際に土器を作ってみます。

 
 

(左)富ノ沢遺跡出土品の数々         (右)出土品の拡大図

 
粘 土
 土器を作るにはまず粘土が必要です。粘土は文房具店などに注文すると適当なものを入手することが出来ます。土木工事があったときなどに偶然見つけた粘土を使うことも可能です。ゴミや小石などが入っていると焼いたときに割れる原因となるので不純物の少ない部分を使います。粘土の小さな皿を作り良く乾かした後、炭火の中で真っ赤になるまで加熱しても、変形したり割れたりしなければこの粘土は合格です。
 まず粘土を板の上で良くこねて均一な塊にします。硬すぎれば少し水を加え、軟らかすぎる場合は風に当てて少し乾かしながらこねます。空気の泡が入らないように注意して良く練り、最後に繰り返し板に叩き付 けて空気を追い出します。
成 型
 ポリ袋や新聞紙の上に乗せた粘土の塊の中央を指で押したり、ゲンコツで叩いて凹ませ、広がり過ぎないように注意しながら徐々に器の形を作ります。粘土の紐を作りこれを積み上げる場合は、接着した面に空気が残らないようにしっかり押える必要があります。器の形が出来たら水滴れを防ぐため内側がツルツルになるように滑らかな石で磨きます。最後に形が崩れないように注意しながら、外側から板や手で軽く叩いて土を締めます。
装 飾
 外側を板で叩くとき、板に粘土が付かないように筋目を入れておくと、筋目の模様で土器の表面を飾ることが出来ます。同じように板に縄を巻くと縄目の模様が入ります。縄の太さや巻き方あるいは転がし方を工夫すると色々な模様を付けることができます。作品の表面に紐を接着して飾ると縄文式土器のようになります。少し乾いた頃に彫刻刀で模様を彫り込むことも出来ます。

紋様を出す工夫(筆、縄、へら等)
陶芸教室作品

乾 燥
 表面に好きな模様を付けたら日陰で数日間乾燥させ、その後直射日光にあて十分に乾燥させます。乾燥が不十分のまま焼くと割れることがあります。乾燥させただけの土器は壊れやすいので丁寧に扱ってください。
野焼き
 本格的な陶器は専用の窯で焼きますが、土器の場合は焚火の中で焼きます。まず地面を浅く掘って薪を敷き、その上に藁や小枝、薪などを積み重ねます。まわりに乾燥させた土器を並べます。始めは弱い火で2時間ほどゆっくりと全体をあぶり、その後焚火の中心に押し込んで、強い火でガンガンと3、4時間ほど焼きます。火が下火になったら静かに土をかけ火を消し、しばらく待って冷えたところで土器を取り出します。
仕上げ
 底がザラザラでテーブルに傷が付く時は紙ヤスリをかけて仕上げます。水が漏れる時は内側に水性ニスを塗り良く乾かせば大丈夫です。三内丸山では内側に漆を塗った容器が見つかっています。

 さて、粘土を高温に加熱すると固くなり、水を入れても崩れなくなるのはなぜでしょう。粘土の状態では土の細かい粒の間に水が入り込んでおり、これが接着剤となって粘り気をあたえ、細かな粉末になることを防いでいます。乾燥の段階でこの水分が空気中に抜けて行くため、土の粒子の間に微細な隙間(気孔)ができ接着力がなくなり壊れやすくなります。これを高温に加熱すると土の粒子同志が合体して、気孔を埋めようとする焼結現象が生じます。粒子同志が隙間なく接着するので機械的にも強くなり、水が漏れなくなります。土器は磁器や陶器ほど高温で焼いていないので、十分に焼結せず、残った気孔を伝って水が漏れることがあります。土鍋の使い始めに粥や米の研ぎ汁を煮立てるのは、その隙間を米の澱粉で塞ぐためなのです。
(桜井 直行)

 
出土品の写真は、青森県埋蔵文化財調査センターの許可を得て、六ヶ所村立郷土館の展示品を撮影させていただきました。
また三沢市民の森陶芸教室の伊藤先生にご指導いただきました。ここに謝意を表します。
 
   
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