〔サンゴの生態〕
 サンゴというと暖かい海の生物の代表的存在と一般的には思われがちですが、実際には南極海から深海まで幅広く分布し、ここ青森県でも陸奥湾の浅虫付近にムツサンゴと名付けられた種類が生息しています。  サンゴはその生態により2つのグループに分けられます。第一のグループはムツサンゴの様にサンゴ礁をつくらず、一個体で生息するもので、非造礁性サンゴ、または単体サンゴと呼ばれています。第二のグループは主に暖海に生息し、沖縄やオーストラリアのグレートバリアリーフの様にサンゴ礁をつくるサンゴで造礁性サンゴと呼ばれています。造礁性サンゴは単体サンゴが集まり群体になったようなものです。  サンゴはよく植物と間違れれますが、実際はイソギンチャクと同じ腔腸動物門に属する動物の一種です。 図1に単体サンゴの断面を示しますが、触手と□、胃で構成されており、昼間はこの触手を体内に閉じていて、夜になると伸ばしてプランクトン等をからめ取ってエサにしています。その他にサンゴは体内に微細な藻類を共生させて、そこからエサとなる有機物をもらっています。この共生藻がいるのは造礁性サンゴで、単体サンゴにはほとんどみられません。このため共生藻類の有無がサンゴ礁を形成するかしないかの一つの指標になっています。
  写真(1)はサンゴ礁の一部を撮影したものですが、様々な形をしたサンゴがみられます。また、写真に写つているソラスズメダイ以外にも多種多様な生物が生息し、小さなサンゴが集まって出来たサンゴ礁が豊富な海の生態系を造りだしていることが判ります。

単体サンゴの断面
写真(1) 沖縄県宮古島のサンゴ礁

〔地球温暖化とサンゴ礁〕
 最近、地球温暖化問題に関係してサンゴ礁が注目されています。地球温暖化とは石油の燃焼や、熱帯林の火災により、大気中の二酸化炭素濃度が増加し、それによって地球の気温が上昇することを言います。この対策として様々な面から取組みがなされていますが、その一つに自然の生態系を利用して二酸化炭素(CO2)を大気中より吸収しようという研究が行われています。
 サンゴの骨格は、炭酸カルシウム(CaCO3=石灰)で出来ています。これは、サンゴが自ら海水中のカルシウムイオン(Ca2+)と重炭酸イオン(HCO3-)を取り込んで作り出しています。この重炭酸イオンは二酸化炭素が海水中に溶け込んで出来るものです。つまり、サンゴが骨格を造る(石灰化する)ことにより、温水中の重炭酸イオンを使うとその分が大気から海水中に溶け込んでいくことになります。このメカニズムを利用して、大気中の二酸化炭素を吸収しようというわけです。写真(2)はその様な試みの一例です。塊状のサンゴを半径50cm程の透明なアクリル製ドームで囲い周囲の環境から隔離した閉鎖空間を作り出し、中の水質変化を測定することで、他の生物の影響を受けずに、サンゴだけの呼吸量や成長量を測定しようという実験です。こういった実験により、徐々にサンゴ礁の仕組みや二酸化炭素の吸収量に対する知見が得られてきています。


サンゴ礁でのドーム実験の様子

 様々な人間活動により成育環境が悪化し、死滅したサンゴ礁もありますが、温暖化対策というだけでなく地球環境の保全という立場からもサンゴ礁生態系に対する理解が必要です。
(石川 義朗)

 
   
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