国際保障措置の実施は、核物質などが軍事目的に利用されないための措置であり、そもそもIAEA設立の契機となった重大任務です。IAEAは核不拡散条約(NPT)に基づき、フルスコープ保障措置協定(日本など非核兵器国を対象)を各国と結び、独自の基準に基づき各国の原子力活動の国際査察を実施しています。
イラクによる核兵器の秘密開発や北朝鮮の再処理工場未申告の問題から未申告施設への査察権限拡大が制度化され、各国との保障措置協定改定交渉を行なっています。またIAEAの査察活動が国連安全保障理事会の権限内の問題である場合は、同理事会に通
告し対処します。イラクの秘密原子力施設の査察と破壊を国連と共同で実施したのはこの例です。

査察状況(ペレットの採取)
また核物質の軍事転用を防止するため、核物質防護ガイドライン(INFCIRC225)を作成し、核物質を不法に盗むことや、輸送および発電所などの原子力施設に対する妨害破壊行為を防止するための対策を各国に勧告しています。日本も国内法令へ取り入れ実施しています。
国際的に原子燃料などの放射性物質を安全に輸送するため、IAEAは輸送規則を作成しています。日本を含む各国が国内法令へ取り入れ実施中です。この輸送規則において、新燃料の輸送容器や高レベル放射性廃棄物の輸送容器などについて輸送中の安全を確保するための基準が示されています。
発展途上国を対象とした技術協力の推進は、原子力平和利用技術の援助(放射線防護、RI利用、食糧農業、原子力安全、放射性廃棄物管理などの分野)として、研修員の受け入れ、専門家の派遣、機材の提供などの活動を実施しています。旧ソ連型の原子力発電所を運転している東欧諸国へは安全対策や廃棄物管理の技術協力が増加しています。またアジア地域原子力技術協力(RCA)の活動には日本が大きく貢献しています。
研究分野では、IAEAの研究所として、
【1】サイベルスドルフ研究所(ウィーン、農業、物理化学、水理、原子力の研究)、
【2】海洋環境研究所(モナコ)、
【3】国際理論物理学研究センター(トリエステ、イタリア)
が設置され、活動しています。
情報交換は、1970年、国際原子力情報サービスセンタ一(INIS)を設置し、実施しています。また原子力関係のデーターベースを整備し、加盟国に提供しています。
IAEA関連の基準や勧告の国内法令への取り入れは、原子力委員会や原子力安全委員会の方針により関係省庁が法制化し、国際的に協調し、原子力平和利用を推進しています。
(成松 佑輔)
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