近年、環境問題の一つとして『オゾン層破壊』や『オゾンホール』といった言葉が様々なメディアで紹介されることが多くなってきました。それでは、いったい『オゾン』とは何なのでしょうか?『オゾン層破壊』とは? さらに、なぜ『オゾン層破壊』が重大な環境問題の一つとして紹介されるのでしょうか?
 『オゾン』とは酸素原子が3個結びついてできる、殺菌効果があり人体に有害な不安定な物質です。オゾンは、酸素原子2個から成る酸素分子が他の酸素原子1個と結びつくことにより発生し、オゾンが光を吸収したり他の酸素原子と結びつくと酸素分子となって安定します(図1)。
 オゾンが何者であるのかが分かったので、次はオゾンが地球の大気の構造(図2)に対してどのような役割を持っているのか、考えてみましょう。

図1 オゾンの発生と消滅
図2 地球大気の構造

 太陽から来る光が地球の大気圏に突入すると、最初に中間圏という極めて空気の薄い層を通 過します。太陽の光には図3に示すような広い範囲の波長の光が含まれていますが、波長の短いものほど気体に吸収されやすいために、中間圏を通る間に波長が280nm以下の光がほとんど吸収されてしまいます。
 その後、光は成層圏という中間圏よりは空気の濃い層を通過します。ここでは、酸素分子が波長200nm〜240nm程度の光を吸収してオゾンが発生し、オゾンも波長300nm〜320nm程度の光を吸収します。また、光のエネルギーを吸収することによって成層圏の空気は暖められて軽くなり、その下の空気とあまり混ざらなくなります。その結果 、オゾンの濃度が高い部分が成層圏の下部にできて、これを『オゾン層』と言います。
 結局、オゾン層で波長が280nm〜315nmの光を吸収するため、地表面では波長が315nm以下の光は、非常に弱められて届くことになります。波長315nm以下の光は、人間が浴びると皮膚ガンや白内障等を引き起こし、多くの生物にも有害なため、オゾン層は人間を含む多くの生物にとって、とても大切なものなのです。

図3 光の波長
図4 オゾン層破壊の仕組み(一例)

 しかし最近、オゾンが減ってオゾン層が薄くなる『オゾン層破壊』や、オゾン層の一部に穴が空いてしまう『オゾンホール』といった現象が起こるようになってしまいました。オゾン層破壊の犯人として様々なものが挙げられてきましたが、現在、その主犯格の一つはフロンガスであると考えられています。
 フロンガスは無毒、無臭で、冷蔵庫やクーラー、スプレーの噴射ガス等に非常に多量に使われてきました。また安定した物質なので、生物や人間の暮らしている対流圏では分解しません。
 ところが、フロンガスが気流によって成層圏に運ばれると、波長が200nm〜220nm程度の光によって分解して、塩素原子を放出します。この塩素原子が曲者で、図4に示すように、せっかく出来たオゾンを次々に酸素分子に変えてしまいます。その結果 、オゾンの濃度が薄くなって、オゾンが吸収していた有害な光は地表面に降り注ぐことになってしまいます。
 そこで、1989年に「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が国際条約として採択されて、オゾン層保護が国際的な協力によって進められています。
(阿部 康−)

 
   
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