人類は約300年前に産業革命でリサイクル出来ないエネルギー源を開発し、そのエネルギーを使って産業を発展させ生活を豊かにすることに成功しました。生活が豊かになると当然のことに人口が増え、その増加した人々もまた、さらに豊かな生活を送るため、次々にリサイクルできないエネルギー源と種々の物質を地中から掘り出し、地球の持っている資源を使い果たそうとしています。それだけでなく人々が使い棄てる廃棄物によって地球の環境が壊れようとしています。このままでは人類は滅亡の道しか残されていないので、考え方を変え、今後永く人類が生きていけるようにしようと言う動さが出てきました。
 国連では、そのため、サステーナブル・デベロップメント(持続可能な発展)が必要であると言っています。持続可能な発展とは「将来世代の人々が充分満足できる生活が出来、かつ現代の我々の生活も満足できるような開発」と言うことだと言われています。ではどうしたら良いのかと言うことになりますが、これがなかなか難しいことなのです。我々の生活は大変複雑な産業や経済の体制によって支えられているわけで、産業や経済のあり方を問い直すことが必要になって来ます。

 
 

既存社会構造とリサイクル社会構造の比較

 

 そのためにはリサイクルできない資源の利用を極力減らし、リサイクル出来る資源で産業や経済及び我々の生活が成り立つように仕組みを変えていくことが必要になります。このため、環境問題に関心の深い多くの分野の多くの人々が寄り集まり、研究を始めています。 具体的な目標としては、
【1】リサイクルできる資源を利用する速度は、リサイクルに必要な速度を超えないようにする。
【2】リサイクルでさない資源を利用する場合には、出来る限りリサイクルできる資源に代替し、リサイクルできない資源の利用速度を、代替するリサイクル可能な資源のリサイクルに要する速度以下に押さえるようにする。
【3】廃棄物を放出する速度は、環境の内で自然に分解される速度より低くする。

が上げられ、この目標を達成するため次のような研究課題に取り組んでいます。
・各産業分野の内でリサイクル出来る資源は何か、どの程度リサイクル出来るか。
・各産業分野の内で、資源をリサイクルするにはどの程度のエネルギーが必要か、また、どの程度、環境 を汚染することになるのか。
・各産業分野で資源をリサイクルするには、どのような技術が必要なのか、またそれらの技術の開発の実現性はどの程度か。
・各産業分野ごとにリサイクルを進めた場合に全体にどの程度のエネルギーが必要になって来るのか、また環境にどの程度の影響が出るのか。
・各産業分野でリサイクルを行なうにはどのくらいのコストが必要になるのか。

このような研究が進めば、人類が地球の限界を超え持続的に発展するためには、産業をどのように変えたら良いかと言うことが分かってくるでしょう。しかしその道程は、そう簡単ではないようです。廃棄物の放出 速度と環境中での分解速度の例をとってみても、廃棄物の種類とか、環境の変化で速度が大幅に変わってくるので、これからも種々の研究が必要になるからです。 よく環境容量(環境内に蓄積される物質の最大許容量)を基準にして放出量を決めようと言う考え方がありますが、どんな物質が、どれだけ蓄積されたら、どのような影響が出るのかと言ったデータも、まだ充分ないので環境容量を決めるのに、なかなか難しい問題があります。ともあれ、このような広範な深い研究を進めることは次の世代の人々のために必要なことです。ミニ地球のような環境研の施設も、この研究に大いに役立つものと考えています。
(新田 慶治)

 
 
ミニ地球(閉鎖型生態系実験施設) 全景(当研究所)
 
   
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