ナガイモ(学名:Dioscorea opposita THUNB)はヤマノイモ科、ヤマノイモ属に属しています。ヤマノイモ科には10属、約650種の植物があり、そのうちヤマノイモ属はもっとも種の数が多く、約600種、主として熱帯や亜熱帯に分布しています。
 ナガイモは通常、いもの形から、長形種をいわゆる「ながいも」、扁形種を「いちょういも」、塊形種を「つくねいも」などとよんでいます。また長形種には「1年いも」「とっくりいも」、扁形種には「仏掌いも」、塊形種には「大和いも」「伊勢いも」「丹波やまのいも」とよばれているものもあります。しかしこれらの間には種々の変異があり、「いちょういも」は「ながいも」の変形種ともみられ、ときには「ながいも」を生ずることもあります。また「つくねいも」から「ながいも」や「いちょういも」が出現することがあり、「ながいも」でも栽培中に扁平なばち形に近い形のいもが出現することはめずらしくありません。このようないもの形状の変異は遺伝的なものと、環境とくに土壌環境などの影響の総合結果 によるものといのれています。したがって各地で系統分離して、いわゆる品種といわれるものでも、個体変異のかなり大きいのが特徴です。
ナガイモとヤマノイモ
 植物学上にいうヤマノイモ(学名:Dioscorea japonica THUNB)は山野に自生しているもので、いわゆる「やまいも」「自然薯」とよばれているものです。したがって植物学的には、ナガイモとヤマノイモは染色体数が異なり別種のものですが、野菜として両者の名前は混用され、ナガイモに対しても、ヤマノイモという言葉がよくつかわれています。
 ナガイモは中国では紀元前2000年、神農皇帝のときに薬用として使用されていたとの記載があり、非常に古い時代から栽培されていたものとみられます。原産地は中国南部の雲南地方で、これがしだいに北上し、北中国から東北中国・朝鮮半島に伝播し、さらに日本に渡来したものと考えられます。
ナガイモのいもの形態
ながいものネット栽培

 わが国で栽培がはじまった時期は作物の中でもっとも古い部類に属し、縄文後期、焼畑での雑穀類や陸稲の栽培がはじまる以前のことといわれています。また台湾にも古い時代に中国本土からもたらされて広く栽培されているほか、日本からの移民によりハワイ諸島でも栽培が見られます。
 わが国のナガイモは、その形状からながいも群、いちょういも群、つくねいも群に分けられますが、その栽培地域はながいも群は中部高冷地・東北北部・北海道、いちょういも群は関東地方、つくねいも群は関西・近畿地方に多く栽培されています。
 本県でも南部地方(現三戸地方)は古くから良質の「ながいも」産地として知られています。これは南部領の藩主が持別 に保護奨励したことによるもので、毎年、百数十本の「ながいも」が幕府の御用いもとして献上されたと伝えられています。また佐藤信淵氏の「神農六部耕種法」に“南部領の畑はいもを作るに最上応合の地なり、ここにできるいもは天下第一上品である。……”とあり、「ながいも」は南部駒とともに南部領を代表する二大産物であったものと思れれます。
 この「ながいも」は、現在では上北地方のヤマセ常襲地帯まで作付けが拡大して、栽培面積、生産量ともに日本一の大産地に発展しています。
(竹村 達男)
 
   
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