初夏に美しく咲き乱れたスカシユリやヤマユリも夏には葉が枯れて大きな球根が土の中にできています。春に植えたジャガイモは夏前に大きく太って、新ジャガとして店頭に並びます。買ってきてつい忘れてしまったタマネギの球根が芽を出してやせ細り、ネギになってしまったり、枯れてしまったと思ったシクラメンを庭の隈に放置しておいたら、饅頭のようなイモからまた芽がでてきて、かわいく思って家の中に戻したり、生活の中には球根や芋があふれています。球根や芋は土のなかにできるので“ねっこ”だと思いがちですが、ジャガイモは茎で、タマネギやユリの球根は葉で、ナガイモは根と茎の中間です。みなさんが知っている球根や芋は植物のどんな器官に由来するのか調べてみましょう。

 
 

表1 球根類の分類

 

【球根の分類】
 球根は表1に示すように、葉起源の「りん(鱗)茎」、茎起源の「球茎」、「塊茎」、「根茎」、根起源の「塊根」に分けられます。タマネギ(図2)やニンニクの葉は基部が茎を包み込んで、幾重にも重なっています。この重なった基部の部分が肥大したものが有皮りん茎です。チューリップ、ダッチ・アイリス(図1)などは毎年親芋(母球)が消耗してなくなり、それに代り数個の新球ができるもので更新型の有皮りん茎です。スイセン(図1)、アマリリスなどは母球が消耗してなくなることはなく、生き長らえて大きさが増し、小さい子供の球根を分球しながら成長していく非更新型の有皮りん茎です。ユリの葉は茎にらせん状にたくさんつきます。この一枚一枚が肥大して茎が短くなると、ユリの球根の形になります(図1)。この事からユリの球根は葉が起源であると考えられます。ユリの球根は球根を包む簿皮のない無皮りん茎に分類されます。

 
 
 グラジオラス(図1)やクロッカス、サトイモの薄皮をめくってみると多くの節が見えてきます(図3)。そして、さらに良く観察すると各節に一個から数個の芽が見られます。こうした球根は、例えば竹の茎の節間を短くして横に肥大させたように見え、球茎と呼ばれ、茎起源の球根です。ジャガイモは薄い皮に包まれていませんが多くの芽をちりばめています。ジャガイモは茎起源で塊茎と呼ばれています。ジャガイモは図4に示したように、地下に茎の一種である匐枝(ふくし)が伸びてその先端が肥大して出来ます。決してサツマイモの様に根が肥大したものではありません。
 球根がジャガイモやサトイモのように茎起源であるかサツマイモやダリア(図1)のように根起源(塊根)であるかを(完全ではないですが)見分ける簡単な方法があります。茎起源のジャガイモを土に半分埋めて おくと芽が出てきます。その芽が大きくなって、小さな葉を付け、その芽の基部から多くの根を伸ばしますが、球根から直接根だけが伸びることはありません。これに対して根起源のサツマイモは土に半分埋めておくと芽が芋の一方の端から伸び、小さな葉を付け、もう一方の端からは直接根が多数伸びていきます。根起源の球根には昔それが収穫される前に茎側に位置した所から芽が、根っこの先端側に位置していた所からは根が伸長する性質を持っています。くわしく調べるには茎と根では組織の構造が全く異なるので切片を作って、顕微鏡で観察すればすぐ分かりますが一般的ではありません。
(山上 睦)
 
   
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