小学校の頃、リトマス試験紙を使って、酸性、アルカリ性(塩基性)、中性を学んだことを覚えているでしょうか。学校の先生の言う通りにいろいろな薬品にリトマス試験紙を浸けると、赤い色が青い色に、青い色が赤い色に変わります。中学になるとフェノールフタレインやBTB溶液を教わったのではないでしょうか。これらのように酸性や塩基性で色が変わるものを酸塩基呈色指示薬と言います。
 では、なぜこれらの指示薬は酸性やアルカリ性で色が変わるのでしょうか。そのことを理解するためには二つのことを知っておかなければなりません。
  一つは酸性に溶けているときとアルカリ性に溶けているときと形が違うものがあるということです。例えば、酢酸は御存知のようにCH3COOHで、水に溶けるとCH3COO-とH+の二つに分かれます。ところが、強い酸性になるとCH3COOHのままで存在することができます。つまり同じ物質でも水溶液の中でイオンの状態でいたり、イオンにならずそのままの状態で存在したりするこことができるものがあるのです。そしてその状態は酸性かアルカリ性かによって偏りがおきます。
 もう一つ知っておかなければならないことは、有機物(炭素や窒素、酸素、水素などでできている化合物)はどのように発色しているかということです。金属の溶液の場合、着いている色はイオンの色を示しています。金属を含まない有機物の場合は二重結合(化学式でよく-C=C-と示されるところなど)の連なりに光を吸収する能力があり、その長さやそこに含まれる電子の状態によって色が変化します。さらにそこに二重結合の部分から電子の状態を変えてしまう力を持つ様々な基(例えば水酸基-OH、アミノ基-NH2)が加わることにより様々な色が付いていきます。
 ゴムを弾くときのことを思い出して下さい。ゴムを張る時の長さによって、また張るときの強さによって音が変わります。丁度それと同じように、指示薬の中の二重結合の側にある基が酸性の時や塩基性の時に電子を引っ張ったり押しつけたりして、二重結合の張り具合を変化させるため、色が変化するのです。
 ところで、酸性やアルカリ性で色が変わるのは実験室にあるような指示薬しかないのでしょうか。
 

 
【家庭でできる実験】
 
私たちが食べているものの中にも色が変わる成分を含んでいるものがたくさんあります。よく、家庭用の科学実験書に掲載されている、紫キャベツはその一例です。他にも一番手頃なのが着色料の入っていない100%果汁のブドウジュースです。試しにブドウジュースに酸性である酢を加えてみるとどうなるでしょう。同じ量の水を加えたときと比較するとわかるように赤く色が変わっているのがわかります。では、アルカリ性を示す重曹を入れてみるとどうなるでしょうか。細かい泡が出て青緑に変化するのがわかります。もし重曹よりも強いアルカリ性を示す物を入れることができれば、黄緑色に変化するのがわかるでしょう。  また、カレー粉にはアルカリ性になると色が変わる色素が含まれています。そのため、「かんすい(アルカリ性)」が含まれている中華麺にカレー粉を少量の水で溶いで混ぜてみると、中華麺にもともと黄色い色がついているためわかりにくいのですが、麺の色がカレー粉の茶色ではなく、淡いピンク色に変わります。この中華麺はソースを加えることでもとの色に戻ります。他の麺類にはかんすいが含まれていないので色は変化しません。また、このようにして作った焼きそばを食べることもできます。
詳しくは参考資料をご覧下さい。(坂内 忠明)
 
 
【参考資料】 谷川貴信・大谷悦久「果汁入りジュースを使う酸・アルカリの識別」、化学と教育(1997)45巻11号661 たかすぎつよし「カレー粉で酸-アルカリ試験紙を作ろう」、子供の科学(1998)10月号72-75  
   
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