オキアミと聞いて、釣りをされてる方はエビに似たその姿形を思い浮かべる方も多いと思います。一般的に釣りエサとして目にするのは南極海に生息するナンキョクオキアミという種で、これを凍結させたものです。その生きているときの婆は写真1のような透き通った色をしてます。オキアミ類は現在世界中で85種類が分類されてます。オキアミの「オキ」は「沖」を意味し、海洋の沿岸から沖合水域に広く分布し、基本的には終生浮遊生活を送ります。オキアミ類は分類学上は甲殻類上綱、軟甲綱、真軟甲亜綱、ホンエビ上目、オキアミ目に属し、外観はアミ類やエビ類と類似していますが、分類学上は全く異なる動物群です。
 オキアミ類の一般的な外部形態は図1のように、頭胸部、腹部、尾部の3部からなります。頭胸部には1対の複眼、2対の触角があり、胸脚は原則として8対であり、摂食に重要な役割を果 たします。腹部は5対の腹脚があり泳ぐ役割をしています。また、10個の発光器を持ってます。
写真1 ナンキョクオキアミ
図1 オキアミ類の一般形態模式図

図2 オキアミ類の発育段階各期の変態模式図

図3 ナンキョクオキアミの初期幼生の鉛直移動模式図
 上記のような一般的に目にするオキアミ類は成体です。この成体になるまでに、オキアミ類は他の甲殻類と同様に、脱皮変態して形が異なる発育段階を経て、成体となります。その一般的なオキアミ類の変態の様子は図2のようになります。まず、卵が産み落とされて、それが孵化してノープリウス幼生となります。このノープリウス幼生は1、2期があり、その次にメタノープリウス幼生となります。メタノープリウス幼生が脱皮して、エビ型のカリプトピス幼生となります。カリプトピス幼生期は3期からなり、この期で体は基本的に二つに分かれ、口器が完成し餌が取れるようになります。続くファーシリア幼生は6期あり、この期間で腹脚や胸脚が発達し、鰓も出現し、発光器、尾節、複眼の発達もみられます。ジュベニルになると全ての脚が完成し、尾節も明確になり、体形は成体型となります。ただし、生殖腺が未発達で、第2次性徴はみられず、雌雄の判別は因難です。ナンキョクオキアミの場合を例に、卵から初期幼生までの鉛直移動の様子を図3に示します。表層で産み落とされた卵は沈んでいく過程で、孵化までのステージが進んでいき、水深数千メートル付近で孵化します。孵化後ノープリウス幼生、メタノープリウス幼生と発育段階が進むに連れ、徐々に上層に上がっていき、餌の摂食が可能となるカリプトピス幼生、ファーシリア幼生のころには、餌となる植物プランクトン等がいる表層付近にたどり着くようになります。卵が沈降途中、水深500メートルくらいの大陸棚等に着いた場合はその場で卵の発育が進行し、幼生も大陸棚の海底付近で発育段階が進み、水深数千メートル付近で孵化したものと同様に、摂食できるころに表層付近に上昇することになります。
 一般的にオキアミ類は幼生期には植物プランクトンを餌としてます。ジュベニルや成体のものは種類や生息環境によって、多少の違いがありますが、胸脚を用いた摂食が基本となります。最も多く見られる摂食方法はろ過摂食です。これは胸脚を広げて、海水中の植物プランクトンや小型の動物プランクトンをろ過する方法です。また、胸脚を使って、中型の動物プランクトン等を捕まえて食べる方法もあります。氷の下についた植物プランクトンを胸脚を使って、掻き取ったり、泥中の生物を捕まえたり、海中のデトライタスを摂食したりと様々な摂食パターンがあります。
 このようにオキアミ類は植物プランクトン等を食べ、そのオキアミを魚類等が餌とすることで、海の基礎生産者のエネルギーを魚類等へ伝える重要な役割を担っています。
(西野 康人)

 
topへ戻るインデックス