この世の中の物は何からできているのでしょう、物をどんどん分けていくと終いには何が出てくるのだううか。このような疑問は誰しも一度は持ったことがあると思います。現在の我々は、この世の中の物全ては原子から成り、原子には色々な種類があることを知っています。化学的な性質を元として、この種類を分類すると、天然には、90種類くらいの原子があり、この種類を元素と呼んでいます。例えば、一番軽い元素は水素で、次に重いのはヘリウムというわけです。
 さて、原子はそれ以上分割できないわけではありません。原子は原子核とその周りを回っている電子から成り立っています。電子の数は元素によって決まっており、水素が1個、ヘリウムが2個で、ウランでは92個になります。一万、原子核には陽子と中性子が詰まっています。陽子の数は、原子核の周りを回っている電子の数と同じです。陽子は正の電荷を持っており、1個の陽子が持っている電荷は1個の電子が持っている負の電荷とちょうど同じだけですので、原子は全体としては正負の電荷がつりあった状態になっています。
 原子核の中に詰まっている、もう一つの中性子とは何でしょう。これは、大きさや重さは陽子とほぼ同じなのですが、電荷を持っていない粒子です。ここで、水素を例に取ってみます。水素の原子核を調べてみると、大部分の水素は陽子が1個だけ入っています。しかし、よく調べると、時々、陽子の他に中性子が1個入っている原子核も見つかります。つまり、同じ水素でも、原子核で見ると2つの種類があるのです。これと同じように、いろいろな元素の原子核を調べていき、中に入っている陽子の数と中性子の数を数えて、結果 をグラフにしたのが図1です。実は、原子核には放射能を持っている原子核と持っていない原子核があり、ここでは放射能を持たない安定な原子核だけをグラフにしました。そのため、ウラン等の放射性の原子核は入れてありません。グラフの中では1つの点が1種類の原子核を表しています。
図1 放射能を持たない安定な原子核の陽子と中性子数
■:原子核  直線は、陽子と中性子が同数の場合を表す。

 この図を見ると面白いことに気がつきます。陽子と中性子が同じ数だけ入っていると、図の中の直線上に乗るのですが、そうはなっていません。良く見ますと、軽い方、つまり陽子や中性子の数が少ないところでは線の上に乗っていますが、数が増えて重くなると線より上の方にどんどんずれてきます。重い方では中性子の数が陽子より多いのです。陽子は正の電荷を持っていますので、狭い原子核の中にぎゅうぎゅう詰になっていると、陽子同士の電気的な反発力が大きく、原子核が不安定になります。そこに電荷を持たない中性子が入ることで、安定性が増すと考えることができます。また、陽子の数が同じで、中性子の数が違う仲間を同位 体と呼び、図では縦に一列に並んでいるのが同位体になります。これをよく見ますと、陽子の数によって、同位体が多いところと少ないところがあることに気が付きます。一番、仲間の数の多い元素は、陽子の数が50の錫で、10種類の同位体があります。
図2 陽子・中性子数の両方が偶数の原子核
■:原子核
直線は、陽子と中性子が同数の場合を表す。
図3 陽子・中性子数の一方あるいは両方が奇数の原子核
■:一方が奇数の原子核 
□:両方が奇数の原子核

 陽子と中性子の数については、もう一つ面白いことがあります。陽子と中性子の数が両方とも偶数の原子核だけをグラフにしたのが図2で、どちらか一方が奇数の原子核は図3です。両方とも奇数の原子核も図3の中に白抜きで表しました。これを見ますと、陽子・中性子の両方が偶数の原子核では、同位体の数が多く、仲間が多いことがわかります。これに比べて、奇数個の陽子・中性子を含む原子核は同位体が少なくなっています。両方とも奇数の原子核は、中性子数0の水素も入れて、わすか5個しかありません。
 日本では、古来、偶数は割れる数として嫌われてきました。8は例外で、江戸時代に文字の形が末広がりということから縁起の良い数の仲間入りをした新参者です。しかし、原子核の中の陽子や中性子の数としては偶数が多く、自然は、ここでは偶数を好むと言えます。
(久松 俊一)

 
   
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