ご挨拶

公益財団法人環境科学技術研究所 理事長 塚田 祥文

 青森県六ヶ所村では今まさに核燃料再処理施設が稼働しようとしています。世界に目を向けると、フランスのラ・アーグの再処理施設が現在稼働中です。また、イギリスのセラフィールドでも2018年まで操業していました。日本では茨城県東海村で再処理施設の運転が行われ、国内の原子力発電所から出された使用済み核燃料の再処理を行い、2014年に廃止が決定されました。核燃料再処理施設からは、通常運転により微弱な放射性物質が環境中に放出されます。私たちは通常の生活によっても天然放射性物質などから常に被ばくを受けていますが、再処理施設の通常運転によってもわずかながらその影響(被ばく線量)を受けます。放出が想定されている放射性物質は、チョルノービリや東京電力福島第一原子力事故時などと異なり、主な放射性物質はトリチウム、炭素-14、クリプトン-85、ヨウ素-129などです。そのため、これら放射性物質の環境から人への移行経路を明らかにし、被ばく線量を予測します。環境科学技術研究所では、地域に特化した気象、海象を考慮し、地域で生産・収穫される農水産物から受ける放射線の影響を評価しています。その結果、再処理施設から通常運転により放出される放射性物質による被ばく線量は、極めて限定的であることがわかりました。また、事故時なども想定し、その影響を予測するための研究も進めています。更には、長期間にわたって環境中に放射性物質が放出されるため、微弱な放射線が動物に与える影響についても研究を進めています。環境科学技術研究所は、地域に特化した課題を解決するため平成2年(1990年)に設立されたユニークな研究所です。私は設立間もない研究所に入所し、22年間若手・中堅の研究者として勤務し、その後2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故への対処のため、福島大学へ転職し、再び縁があって環境科学技術研究所で勤務することになりました。今後も環境科学技術研究所は、独立した第三者機関として科学的な根拠に基づく知見を積み重ね、情報を発信してまいります。