ご挨拶

理事長:小野 哲也

人類が放射線の存在に気づいてからまだ110余年に過ぎませんが、発見以来その利用は医療、発電、非破壊検査等々さまざまな領域で広範囲にわたっています。他方、放射線はその量が多くなると人体の健康に害を及ぼすことが分かっていますので、十分に管理された状態で利用されるのが鉄則です。

しかしながら今回の福島原発事故は、その鉄則が破られることがあり得ることを明示し、改めて放射線や放射性物質の生体と環境への影響を正確に理解することが重要であることを再認識させることになりました。

環境科学技術研究所(環境研)は核燃料サイクル施設の設置に伴い、そこから排出される少量の放射性物質の環境および人体への安全性確認のため1990年に設立されました。それ以来、大型の研究設備をもったユニークな研究所としてさまざまな成果をあげつつあります。具体的には放射性物質の環境中での動態の解明やモデル化、被曝線量評価、低線量率放射線長期曝露の健康影響の解明などです。

これらはいずれも、原発事故によって関心の高まったテーマでもあります。歴史的に見ても放射線の利用拡大は世界の潮流であり、少量の放射性物質や低線量放射線の影響を解明することは私たちが直面する大きな課題の一つと言えましょう。今の環境研のなすべきことは、この課題にむかって、これまでにも増して研究成果を出し、それを地元の人たちはもとより国内外に向けて発信することだと思います。

現在、嶋前理事長の働きかけによりヨーロッパ連合(EU)の低線量放射線影響研究プロジェクトに日本からただひとつ参加し、イタリア、ドイツの研究者との共同研究が進んでおり、また、福島県での汚染の解析にも参画して活動の幅を広げています。社会にむけた成果発表会や放射線影響の啓蒙活動も続けています。

今後これらの活動をさらに強化していくことが環境研の使命と考え、更なる発展をめざしてゆきたいと思っております。ご支援の程よろしくお願いいたします。