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トリチウムの内部被ばく線量の評価に関する論文掲載

 Scientific Reportsに当所の環境影響研究部 増田副主任研究員の論文が掲載されました。掲載概要は以下の通りです。


「重水素標識化合物及び食材投与による、ヒトにおけるトリチウム経口摂取からの被ばく線量の推定」

 大型再処理施設から排出されるトリチウム(放射性の水素)に起因する周辺住民の被ばく線量のほとんどは、食物中に入ったトリチウムを体内に取り込むことによるものと考えられており、体内からの被ばく(内部被ばく)をすることになります。また、トリチウムは水あるいは有機結合型トリチウム(OBT:炭水化物や脂質などの有機物を構成する元素として存在)で環境中に存在します。トリチウムの内部被ばくによる被ばく線量を評価する場合、国際放射線防護委員会(ICRP)の線量評価モデルを使用した“線量換算係数”が使われていますが、このモデルでは一部の体内での動きに関するデータがヒトの代謝データに基づいたものではありませんでした。

 そこで、放射性のトリチウム(3H)の代わりに安定同位体の重水素(2H)を使用した化合物と食品をボランティアの被験者に投与し、ヒトでのトリチウムの体内の動きに関するパラメータを推定するための実験を行いました。OBTとして摂取した後すぐに水(HTO)となり体外に排出されるトリチウムの割合は、日本及び米国の食品摂取状況に従ったOBT摂取に対してそれぞれ68±15%及び66±14%であり、いずれの場合も動物実験から定めたICRPモデルの値(50%)よりも大きいことが分かりました。それらの数値を用いて求めた線量換算係数(それぞれ3.3×10-11 シーベルト/ベクレル及び3.4×10-11 シーベルト/ベクレル)は現行の線量換算係数(4.2×10-11 シーベルト/ベクレル)よりも小さかったことから、このパラメータに関してICRPのモデルは、より安全側に評価されていることが分かりました。

 一方、脂質の栄養素の一つであるパルミチン酸中の1ベクレルのトリチウムからの預託実効線量は、被験者間で3.2〜35(×10-11 )シーベルト/ベクレルまで変動し、大豆からのそれは1.9〜18(×10-11 )シーベルト/ベクレルまで変動し、ある種の食べ物では、ヒトによっては現行の線量換算係数4.2×10-11 シーベルト/ベクレルより必ずしも小さくならない場合もあることが分かりました。


掲載論文

Tsuyoshi Masuda, Toshitada Yoshioka. Estimation of radiation dose from ingested tritium in humans by administration of deuterium-labelled compounds and food.
Scientific Reports 11, 2816(2021)


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