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胎児期の放射線影響に関する論文が掲載

 Radiation Researchに当所の生物影響研究部 中平研究員の論文が掲載されました。


 いわゆる胎児期(受精卵から胎児まで)は個体を構成する組織や器官、臓器の形成や発達が生じる時期であることから、放射線を含めた外的因子の影響が大きいと考えられています。高線量率放射線については多くの研究がなされているものの、低線量率放射線についての知見は少なく、特に胎児期に低線量率放射線を慢性的に被ばくした場合の生物影響はほとんど知られていません。

 本研究ではマウスの交配をした後、妊娠0日から18日目まで低・中線量率ガンマ線を照射し、出生直前のマウス胎仔の生殖腺(精巣および卵巣)を組織学的に解析しました。その結果、中線量率(200mGy/日)ガンマ線を被ばくしたマウス胎仔では胎仔の生殖腺中の生殖細胞(精子や卵子のもとになる細胞)が顕著に減少していました。一方で、低線量率(20mGy/日)ガンマ線を被ばくしたマウス胎仔の生殖腺では生殖細胞はわずかに減少傾向を示したものの、統計学的に有意な差は認められませんでした。また、生殖細胞以外の生殖腺の細胞に大きな違いは認められませんでした。

 この結果から、胎仔期の被ばくでも特に感受性の高い細胞や組織においては、低線量率放射線でもその被ばく影響が観察される可能性があることが示唆されました。ただし総線量は360mGy(放射線作業従事者の1年あたりの線量限度のおよそ20倍に相当)と比較的大きいことや、母マウスの被ばくの影響など、複雑な過程を反映した結果であると考えられます。今後、このわずかな違いが生後の生殖機能や生涯を通しての病気の発生などへ影響を及ぼすかどうかなど、より詳細な解析を進めていく予定です。


  • 注:
  • ・mGy : ミリグレイ(放射線を受けた量を表す単位)
概要図
掲載論文

Rei Nakahira, Yoshiko Ayabe, Ignacia Braga-Tanaka III, Satoshi Tanaka, Jun-Ichiro Komura. Effects of continuous in utero low- and medium-dose-rate gamma-ray exposure on fetal germ cells.
Radiation Research, 195(3):235-243 (2020).


関連ページ

平成30年度成果報告会資料「母体内における放射線被ばくの影響を調べる」
   (外部:排出放射性物質影響調査HP)


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