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土壌水分と樹木の霧水利用との関係に関する論文が Plant and Soil に掲載されました

 Plant and Soil に当所の環境影響研究部の今田研究員の論文が掲載されました。掲載概要は以下の通りです。


「土壌乾燥化がクロマツ苗木の霧水の保持時間を延長」

 六ヶ所村を含む北日本太平洋側では、北東気流(やませ)に伴う霧が発生します。森林で樹冠(樹木の上部で葉が茂っている部分)に捕らえられた水は、霧多発地域の森林生態系の水循環や物質循環に重要な役割を果たすことが知られています。近年、気候変動に伴う大雨や強雨の発生頻度の増加、雨の降る日数の減少などの影響が現れ始めており、降水が無い日が引きつづく日数の長期化も予測されています。やませに伴う霧の直接的な影響を受ける太平洋沿岸地帯には、主にクロマツ海岸林が広がっていますが、海岸林の土壌は比較的水分保持能が低く、無降水継続日数の長期化に伴う土壌乾燥の影響を受けやすいと考えられます。

 本研究では、土壌の湿潤及び乾燥条件下で育てたクロマツ苗木に対し重水(重水素を含む水)を霧状にして散布し(図1)、その数日後に当年葉、旧葉、当年枝、旧枝、根及び土壌からの抽出水に含まれる重水素濃度を測定しました(図2)。その結果、土壌水分条件に関わらず植物体各器官で重水素が検出されました。また、土壌乾燥条件下の苗木では、湿潤条件下の苗木と比べて、各器官の重水素濃度が高いことも分かりました。このように、土壌乾燥化がクロマツ苗木の霧水の保持時間を延長する可能性が示されました。さらに、土壌においても重水素が僅かに検出され、葉で吸収した霧水が土壌へ移行することが示唆されました。

 本研究成果は、気候変動の影響や樹木によるやませ霧の利用プロセスの理解に有用な情報となることが期待されます。本研究はJSPS科研費 JP 17K15290の助成を受けたものです。



掲載論文

Shogo Imada, Hideki Kakiuchi, Masaru Nagai. Soil drought increases the retention time of plant water in Pinus thunbergii saplings. (2023)
https://doi.org/10.1007/s11104-023-06053-z


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