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有機結合型トリチウムの海産魚における蓄積と排泄に関する論文が Science of the Total Environment に掲載されました


「重水素をトレーサーとしたヒラメ中有機結合型トリチウムの蓄積と排泄に関する実験」

 原子力施設から海洋に排出されるトリチウム水は、水と同様に生物中に取り込まれ、一部が有機物に結合した有機結合型トリチウム(OBT)へと変化します。OBTはトリチウム水に比べて生物中に残りやすいため、周囲の濃度を超えて蓄積する可能性が議論されてきました。

 現在、生物の体内で作られたOBTが、トリチウム水と同様に蓄積しないことは、さまざまな研究により明らかにされつつあります。一方、海産魚については実際の環境での観測データはあるものの、実験データがありませんでした。今回の論文では、海水中のトリチウムが海産魚に取り込まれてOBTとなり、その後排泄される様子をヒラメの飼育実験により明らかにしました。

 実験では、トリチウムと同じ水素で安定同位体(放射線を出さない)である重水素を海水からヒラメに取り込ませました。ヒラメの可食部である筋肉中の有機結合型重水素濃度は、海水中の重水素濃度を超えないこと、排泄により重水素を取り込む前の濃度レベルまで戻ることが分かりました(図1)。この結果は、海洋放出されたトリチウムがヒラメ筋肉中でOBTとして周囲の濃度を超えて蓄積されないこと、作られたOBTが残り続けずに排泄されることを示しています。また、モデルにより、ヒラメ筋肉中のOBTの生物学的半減期は133日であることが初めて明らかになりました。

本内容は、2023年9月25日付でプレスリリースを行いました。

図1
図1 ヒラメ筋肉中の有機結合型重水素濃度の推移



掲載論文

Takashi Tani, Yoshio Ishikawa. A deuterium tracer experiment for simulating accumulation and elimination of organically bound tritium in an edible flatfish, olive flounder. (2023)
https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2023.166792


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