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海藻へのトリチウム取り込み度合いを評価した論文が国際学術誌 Marine Pollution Bulletin に掲載されました

 Marine Pollution Bulletin に当所の環境影響研究部の佐藤研究員、谷研究員の論文が掲載されました。論文の概要は以下の通りです。


「明及び暗条件下における重水トレーサ実験による食用海藻への有機結合型トリチウムの蓄積度合いの評価」

 福島第一原子力発電所の事後処理により生成したトリチウムを含む処理水の海洋放出が2023年8月より開始されましたが、これに伴って福島沿岸の海産物へのトリチウムの移行は社会的に大きな関心事となっております。この懸念の払しょくへの一助として、本論文では、トリチウムの挙動を模擬できるトレーサ物質の重水素を添加した海水を用いた海藻(スジアオノリ、オゴノリ)の培養実験を実施し、これら海藻への有機結合型トリチウム(OBT)としてのトリチウムの移行度合いを調べました。その結果、海藻のOBT濃度は最大でも海水中トリチウム濃度の半分程度までの増加に留まることが明らかとなりました。

 この実験結果に基づいて、福島沿岸域に生息する海藻へのOBTの移行度合いを推定しました。この際には、最も深刻な条件を想定するために、東京電力が定める処理水の海洋放出時における海水中上限値(1,500 Bq/L)のトリチウム濃度が海水中で常に維持された状況を仮定しました。この条件下で海藻への移行度合いを推定した結果、OBT濃度として0.11Bq/g-湿重量となりました。この値はコーデックス委員会が示す食品中の基準(10Bq/g-湿重量)の約1%であり、福島沿岸域の海藻について最大限のトリチウムの移行状況を想定したとしても、その移行量は非常に小さいことが明らかとなりました。

海藻培養実験の風景

 重水素を添加した人工海水内において海藻を培養した。写真の上下ともに、左の水槽は水温15℃、右の水槽は25℃に保たれており、各々の温度は福島沿岸海水の年平均と夏場の最大水温を想定している。また、緑色の海藻がスジアオノリ、褐色の海藻がオゴノリである。


掲載論文

Yuhi Satoh, Takashi Tani. Evaluating the accumulation potential of organically bound tritium in edible seaweed under dark and light conditions through a deuterium tracer experiment (2025)
https://doi.org/10.1016/j.marpolbul.2025.118709


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