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トリチウム研究センターの森脇研究員が Fusion Science and Technology に論文を発表しました

 当所のトリチウム研究センターの森脇研究員は Fusion Science and Technology に下記論文を発表しました。概要は以下の通りです。


「細胞内分布に基づいた有機結合型トリチウムの線量評価と影響評価」

 放射性核種であるトリチウムが放出するβ 線の飛程は細胞中で最大約 6μm と非常短いことが知られております。この飛程は、ヒト細胞の大きさの平均がおおよそ直径 20μm であることを考慮すると十分に小さく、細胞内に取り込まれたトリチウムから受ける細胞核の被ばく量は、細胞内での分布に大きく影響を受けると予想されています。一方で実際にトリチウム化合物を細胞に取り込ませ、その細胞内分布を解析し、線量評価を行った研究はこれまでに非常に限られた例しかありませんでした。そのため、これまでの有機結合型トリチウム(以下、OBT)の線量評価は細胞内に均一に分布するという仮定のもとで行われてきました。

 本研究では細胞分画という細胞を小器官ごとに分離する手法を用いて、細胞核分画(主に細胞核が含まれる)、膜分画(主にリソソームとミトコンドリアが含まれる)、細胞質分画(主に細胞質が含まれる)の3つに分離することで、細胞内のOBTの分布を解析し、線量評価と影響評価を行いました。トリチウム標識リシンを投与した培養細胞で細胞内のOBT分布を解析したところ、3つの分画間でOBTの含有濃度に大きな差はありませんでした。次に細胞核の体積とトリチウム含有量をもとに細胞核の被ばく量を算出したところ、細胞内の均一分布を仮定したときの線量よりもおおよそ5倍程度高くなることが分かりました。一方でこの5倍という細胞核線量に対して、DNAの損傷の指標である γ H2AX の上昇は見られず、細胞内だけでなく細胞核内における分布も重要であることが示唆されました。本研究は、アミノ酸のような複雑な細胞内分布様式を示す物質で細胞内分布に基づいた細胞核の線量評価を初めて行った研究であり、細胞内均一分布と実際の細胞内分布の乖離を示唆したものです。


掲載論文

Takahito Moriwaki, Tsuyoshi Masuda. Evaluation of radiation dose and biological impact of OBT based on intracellular distribution. (2026)
https://doi.org/10.1080/15361055.2026.2656967


関連ページ

トリチウム                (外部:排出放射性物質影響調査HP)


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