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2026年度
植物プランクトンの有機物に結合したトリチウムの海水中における安定性に関する論文が国際学術誌 Water Research に掲載されました
Water Research に当所環境影響研究部の佐藤副主任研究員並びに筑波大学の小野氏及び大森助教の共同研究による成果が掲載されました。論文の概要は以下の通りです。
「重水素トレーサを用いた海水中における植物プランクトン由来有機結合型トリチウムの安定性に関する実験的評価」
福島沿岸域におけるALPS処理水の海洋放出などに起因して、沿岸海域におけるトリチウムの環境動態は社会的な関心事です。海水中のトリチウムは大部分が水形態(トリチウム化水:HTO)として存在しますが、一部は植物プランクトン有機物に取り込まれ、有機結合型トリチウム(OBT)となります。筆者らは先行研究において、福島沿岸域における植物プランクトンのOBT生産速度を見積もり、その速度によるOBT生成量が環境や生態系に影響を与えうる水準と比較して、非常に小さいことを示しました(Satoh and Omori, 2023、当研究所HP内、研究成果を参照)。一方、もし植物プランクトンのOBTが分解しにくい性質を有していた場合、生産速度が小さくても海水中に蓄積していく可能性がありました。
本研究では、この可能性への懸念を明確にするため、海水中における植物プランクトンOBTの安定性を評価する実験を実施しました。この実験ではトリチウム動態を模擬することが可能な水素の安定同位体(放射線を放出しない)である重水素(2H)をOBT動態の追跡物質(トレーサ)として植物プランクトンに取り込ませた後、2Hで標識された植物プランクトン有機物の海水中における分解実験を実施しました。
実験の結果、2Hで標識された植物プランクトン有機物は、半月で約80%が分解し、150日後には6.6%のみが残存しました。このことから、植物プランクトンによって生産されたOBTは、その大分部が半月程度で分解して水形態のトリチウムであるHTOに戻り、速やかに拡散すると考えられました。つまり、海水中へのOBTが蓄積していく可能性は低いことが示唆されます。本研究成果は、福島沿岸海域におけるALPS処理水に由来するトリチウム動態や、六ヶ所村沿岸域における再処理施設から排出されるトリチウム動態の把握にとって重要な知見となります。
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| 図. 重水素濃度に基づいて推定された植物プランクトン由来の粒子状有機態水素濃度の時間変化 |
掲載論文
Yuhi Satoh, Tsukasa Ono, Yuko Omori. Experimental evaluation for stability of phytoplanktonic organically bound tritium in seawater using a deuterium tracer (2026)
https://doi.org/10.1016/j.watres.2026.126572
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