研究報告(平成24年度)

はじめに

当研究所は、平成24年4月1日付をもってこれまでの財団法人から公益財団法人へ移行した。公益財団法人としての業務は、放射線(能)の環境への影響等の環境安全に関する調査研究を継続し、原子力と環境のかかわりについての理解の増進を図るとともに、原子力関連分野の人材育成を支援する等、これまでの事業を引き続き行うこととしている。

平成24年度における事業は、青森県から、大型再処理施設排出放射能影響調査交付金事業として調査研究9件、それらの調査研究に係る情報を青森県民に対して発信する活動1件及び企画評価委員会の運営1件を受託し、計画通りに実施した。また、日本原子力研究開発機構より福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の長期的影響把握手法の確立のための放射能測定を、環境省からは低線量率放射線長期被ばくによる生体影響の低減化に関する研究を受託し、計画どおりに実施した。

受託事業の概況

I. 放射性物質等の環境影響等環境安全に関する調査研究

1. 排出放射能の環境移行に関する調査研究

1.1 総合的環境移行・線量評価モデルの精度向上と拡張

大型再処理施設から排出される放射性核種による中長期にわたる現実的な被ばく線量を評価することを目的として平成22年度までに開発した総合的環境移行・線量評価モデル(総合モデル1.0)の精度向上のために、これまでの調査で得られた放射性核種の形態別挙動及び地域の自然環境を考慮した放射性核種の挙動を組み入れる。さらに、鷹架沼及びその集水域に関する放射性核種移行モデルを構築し、総合モデル1.0を拡張する。

平成24年度は、平成23年度の機能拡張(総合モデル1.1)に引き続き、積雪時のトリチウム(3H)の環境移行を評価するためにモデルの改良を行うとともに、ウェザリングによる作物葉面からの放射性核種の除去に関する詳細な機構を導入し、総合モデル1.2とした。また、気象モデル及び大気拡散モデルの各種パラメータの最適化を行い、アクティブ試験期間中の85Krの大気拡散予測精度を高めた。さらに、施設近傍の鷹架沼及びその集水域における放射性核種移行モデル構築のために、鷹架沼の海水交換量及び底質環境(有機物含有量等)の水平分布を明らかにするとともに、鷹架沼集水域の地盤の比抵抗分布及び地下水位等の水文データを実地調査により取得した。

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1.1 総合的環境移行・線量評価モデルの精度向上と拡張(451KB)

1.2 総合的環境移行・線量評価モデルの検証

大気、降水をはじめとして陸域、湖沼及び沿岸海域から採取する環境試料及び日常食中の放射性核種濃度(3H、14C、129I等)を測定し、得られたデータを用いてこれまで構築した総合的環境移行・線量評価モデル(総合モデル1.1)を検証する。

平成24年度は、ほとんどの試料中の排出放射性核種濃度にバックグラウンドレベルからの上昇は認められなかったが、土壌や湖底堆積物等に大型再処理施設のアクティブ試験によって排出された129Iが残留し、それが徐々に減少していることが判明した。さらに、福島県で採取した植物試料等の3H濃度を測定し、大気中3H濃度及びそれによる被ばく線量を推定した。

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1.2 総合的環境移行・線量評価モデルの検証(496KB)

2. 放射性ヨウ素の環境移行パラメータに関する調査研究

大型再処理施設から排出される129Iからの現実的な被ばく線量や環境中挙動を評価する上で、移行係数等のパラメータを把握する必要がある。そこで、現実的な被ばく線量評価用パラメータ及び土壌における浸透性を決定する移行パラメータ並びにそれらに与える環境因子の影響を明らかにして、放射性ヨウ素の環境移行予測の精度向上に資するため、以下の調査を行う。

2.1 牧草についてのヨウ素のウェザリング係数

牧草の葉面に付着したヨウ素の葉面吸収、除去(ウェザリング)及び揮散の速度を物理・化学形態別に求める。

平成24年度は、無降水条件下における粒子状ヨウ素(I-)の葉面吸収及び揮散の速度を求め、葉面に負荷したヨウ素の一部が葉部へ吸収、あるいは大気へ揮散するものの、その多くは吸収されることなく葉面に残存し、それらは牧草の生長段階に影響されないことを明らかにした。また、葉面上に負荷した粒子状ヨウ素(I-)の揮散速度に光の照度が影響を与えないことを明らかにした。さらに、粒子状、液状及び無機ガス状で葉面に負荷したヨウ素の風による除去率を求めたが、負荷形態によらず風によるウェザリング効果は認められなかった。

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2.1 牧草についてのヨウ素のウェザリング係数(452KB)

2.2 水産生物におけるヨウ素の形態別濃縮係数

海水中のヨウ素はI-、IO3-の化学形態をとることが知られている。海水から生物へのヨウ素の濃縮係数は化学形態により異なると考えられるため、青森県沿岸域の水産物(海藻等)を対象に、海水中I-、IO3-からの濃縮係数を室内実験により求める。

平成24年度は、緑藻類(アナアオサ) を対象に放射性ヨウ素(125I)の化学形態別 (I- 又はIO3-)濃縮係数を求めたところ、I-の濃縮係数はIO3-の約10倍であった。また、I-濃度を高めた海水中で培養したアナアオサに含まれるヨウ素の約2/3は有機態であることがSPring-8でのX線吸収端近接構造解析により明らかとなった。

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2.2 水産生物におけるヨウ素の形態別濃縮係数(568KB)

2.3 土壌中ヨウ素の浸透性

土壌に沈着した放射性ヨウ素の一部は下方に浸透し地下水へ移行するため、放射性ヨウ素の土壌浸透性とそれに与える植生等の環境因子の影響を明らかにする。

平成24年度は、土壌における放射性ヨウ素の化学形態別下方浸透速度を求めるため、六ヶ所村二又の牧草地から表層コア土壌試料を採取し、バッチ法により125I(I- 又はIO3-)の分配係数を求め、下方浸透速度を算出した。また、土壌コア試料のカラム試験を行い、下方浸透速度計算用データを得た。さらに、表層土壌の土壌溶液中ヨウ素の化学形態変化への物理・化学的要因の影響を明らかにするために、温度の影響について調査したところ、4〜30℃の範囲での化学形態変化は認められなかったが、45℃では有機態ヨウ素の溶出が増加した。加えて、生物学的要因がイネ根圏中ヨウ素の化学形態に与える影響を明らかにするため、イネの砂耕栽培を行い、砂耕間隙水中のI-、IO3-濃度は植物の有無により差異があることを明らかにした。

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2.3 土壌中ヨウ素の浸透性(500KB)

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