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2. 低線量放射線の生物影響に関する調査研究

低線量率・低線量放射線のヒトへの影響を推定するため、異なる線量率と集積線量の放射線をマウスに照射して以下の研究を実施した。

2.1 低線量放射線生物影響実験調査(継世代影響・線量率効果解析)

高線量率(700〜800mGy/分)及び低線量率(20mGy/日)ガンマ線を同じ集積線量になるまでオスマウスに照射し、照射終了後に非照射メスマウスと交配して得られる仔マウスとオス親マウスを終生飼育し、病理学的に死因やがんの発生率等を調べ、線量率の違いが異なる継世代影響を及ぼすかどうかを調査する。さらに尾組織から抽出・精製したDNAを用いて遺伝子変異を調べる。

調査最終年度である令和2年度は、終生飼育実験、死亡マウスの病理学的解析並びに遺伝子変異解析を完了し、総合解析を行った。

報告詳細
2.1.1 継世代影響・線量率効果解析 -病理学的検索- (589KB)
2.1.2 継世代影響・線量率効果解析 -遺伝子変異検索- (630KB)

2.2 低線量率放射線に対する分子細胞応答影響実験調査(第2期)

第1期調査において、低線量率放射線長期照射はマウス組織・細胞の遺伝子発現を変化させること、この変化はより高い線量率の照射の場合と異なること、またこの遺伝子レベルでの変化は個体レベルでの肥満や脂肪肝といった健康影響と相関している可能性があることが見出された。そこで、本調査では、この低線量率照射に特有な遺伝子発現変化をもたらしている制御機構の変化(エピジェネティックな変化、具体的にはDNAメチル化や非コードRNAの変化)を明らかにするとともに、これらの分子レベルの変化により引き起こされると考えられる細胞の性質(増殖能や分化能等)への影響を明らかにする。

調査初年度にあたる令和2年度は、低線量率放射線の遺伝子発現制御機構への影響及び細胞の増殖能や分化能等への影響を解析するために必要な手法を検討し確立した。

報告詳細
2.2 低線量率放射線に対する分子細胞応答影響実験調査(第2期)(603KB)

2.3 低線量率放射線に対する生理応答影響実験調査(第2期)

マウスへの低線量率放射線長期照射は、個体の生理学的恒常性維持のための様々な調節システムに影響を与え、その結果として個体レベルでがん及び非がん病変の誘発、寿命短縮などの影響を及ぼしていることが明らかになりつつある。第1期調査では、低線量率放射線の造血系、免疫系、内分泌系に対する影響に関して解析を行い、内分泌系に関しては、内分泌器官である卵巣の照射の影響が個体内を伝播し他のさまざまな臓器における発がんを引き起こしていることを明らかにした。本調査では、低線量率放射線影響が内分泌系を介して全身に伝播する仕組みをさらに詳細に解析するとともに、新たに神経系及び血管系に関する解析を行う。

調査初年度にあたる令和2年度は、内分泌系、神経系、血管系それぞれへの低線量率放射線の影響の解析に関する実験の手法を確立した。

報告詳細
2.3.1 低線量率放射線照射が内分泌系に及ぼす影響(610KB)
2.3.2 低線量率放射線が血管系に及ぼす影響(494KB)

2.4 低線量率放射線影響に対する修飾要因実験調査

ヒトが放射線被ばくしたときの影響の大きさや現れ方については、生活環境、生活習慣などの因子によって異なることが明らかになっている。言い換えると、放射線の影響の大きさや現れ方を、これらの因子の調節によって「修飾」することが可能であると考えられる。本調査では、最終的にはヒトの放射線影響低減化に資する情報を得ることを目的として、マウスの飼育環境、飼育条件の調節による低線量率放射線長期被ばくの影響の大きさや現れ方の変化を明らかにする。

調査初年度に当たる令和2年度は、マウスの飼育環境、飼育条件調節による放射線照射の影響の大きさや現れ方の変化を評価する実験条件の検討を行い確立した。

報告詳細
2.4 低線量率放射線影響に対する修飾要因実験調査(562KB)

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