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2. 大気・海洋への排出放射性物質の環境影響に関する調査研究

六ヶ所村の大型再処理施設の本格稼働を見据えて環境試料のサンプリング及び観測体制の増強を図り、周辺環境における排出放射性核種の動態及び蓄積、並びに食品・日常食中の濃度水準の把握や放射性核種濃度データを用いた地域の実態に即した線量評価を実施した。また、野外実験により放射性核種の移行及び環境要因が土壌中放射性核種の化学形態に与える影響を調査した。さらに、周辺地域における重要な農水産物中の放射性核種の移行及び残留性を明らかにするための実験を行った。

2.1 排出放射能の環境影響に関する調査研究

大気、陸域、陸水、沿岸海域、及び食品・日常食の5項目に分類し、六ヶ所村の大型再処理施設周辺における 3H、14C、129I 及び 85Kr 等を対象として、施設由来の排出放射性物質の影響について調査した。

令和3年度は、大気については 3H、14C、129I 及び 85Kr 等を対象として六ヶ所村及び弘前市( 14C 及び 85Kr を除く)において連続観測を行い、環境γ線線量率及び排出放射性核種の大気中濃度、降下量変化及び濃度分布のデータを取得した。陸域については、施設周辺の土壌及び植物における3H、14C 及び 129I 濃度を取得するとともに、環境研構内において農作物を栽培し、大気環境中の排出放射性核種濃度の測定結果と併せて、土壌・大気−作物間の放射性核種の移行評価を可能にするデータを取得した。また、畑地及び播種後一年目の牧草地において、HT型トリチウムの酸化速度を取得した。陸水及び沿岸海域では、施設周辺の河川水や地下水、湖沼水、沿岸海域の海水、堆積物及び水生生物の 3H、14C 及び 129I 濃度等のデータを取得した。食品・日常食については、施設周辺において生産・漁獲された農畜水産物及び周辺住民から陰膳法により得た日常食中の 3H、14C 及び 129I 濃度等の実態を調査した。なお、日常食に含まれる排出放射性核種の摂取による被ばく線量を推定したところ、過去の青森県のバックグラウンド調査と比較してやや低い値であった。

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2.1 排出放射能の環境影響に関する調査研究(279KB)

2.2 地域主要農水産物への移行・残留性に関する調査研究

地域の主要農産物であるナガイモ及び水産物であるヒラメやメバル等を対象として、六ヶ所村の大型再処理施設から排出される放射性物質の移行及び残留性に関する調査を行った。ナガイモについては 14C を、水産物に関しては 3H 及び 129I を想定し、それぞれ安定同位体である 13C 及び重水素、並びに放射性同位体の 129I を用いたトレーサ実験を行った。

令和3年度は、圃場でムカゴから栽培したナガイモの生長を調査し、葉、茎、根及び新イモ中炭素量の時間変化を明らかにした。加えて、13C をトレーサとした実験系の構築として、溶液供給によりナガイモをムカゴからポット栽培する手法を確立した。また、ヒラメへの 3H 移行に関する調査では、重水添加海水へのばく露実験を水温条件別に行い、低水温条件で筋肉中の非交換型有機結合型重水素濃度の上昇が緩やかになることを明らかにした。ヒラメへの放射性ヨウ素移行に関する調査では、129I 添加海水へのばく露実験を行い、ヒラメ筋肉中 129I 濃度がばく露開始後から速やかに上昇し、28日間のばく露期間中に平衝に達することを明らかにした。

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2.2 地域主要農水産物への移行・残留性に関する調査研究(246KB)

3. 放射性物質の異常放出事後対応に関する調査研究

六ヶ所村の大型再処理施設の万が一の異常事象時に環境中への放出が想定される放射性核種について、周辺地域の主要な作物への移行及びその低減に関する調査を行った。

3.1 作物地上部表面の放射性物質の挙動に関する調査研究

地域の主要農産物であるナガイモ等の葉面に沈着した放射性セシウムの葉面吸収、転流及びウェザリング、リンゴの果実及び葉面に沈着した放射性セシウムの移行に関する実証的データを取得し、異常放出時の農作物への放射性セシウムの移行に関する信頼性の高い挙動予測手段を提供することを目的とした。

令和3年度は、リンゴのふじ幼木を対象に、粒子状セシウムを負荷した果実表面又は葉面を雨にばく露し、雨ばく露後の果実表面又は葉面におけるセシウム残存率を雨ばく露時間及び降雨強度別に求めた。

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3.1 作物地上部表面の放射性物質の挙動に関する調査研究(212KB)

3.2 放射性物質の移行低減化に関する調査研究

放射性セシウムの吸収及び転流を制御することにより、牧草及びイネ玄米への放射性セシウムの移行を低減化する手法を確立することを目的とした。さらに、科学的知見の乏しい放射性ルテニウムについて、環境試料等からの溶出特性を調査する。

令和3年度は、イネの栄養成長期におけるカルシウム散布が、葉から玄米への放射性セシウム転流に与える影響を調査し、土耕栽培したイネにおいてカルシウム散布が葉に沈着したセシウムの玄米への移行抑制に効果を示すことが示唆された。また、牧草中放射性セシウムの収穫時期別濃度変動を調査するためのRIトレーサを用いた室内実験手法を確立するとともに、経年的変化を調査するための試験圃場を整備した。加えて、環境試料中安定ルテニウムの存在形態分析のための手法及びルテニウム測定時に干渉する元素を除去する化学分離法を確立した。

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3.2 放射性物質の移行低減化に関する調査研究(392KB)

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