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1.5 閉鎖系陸・水圏実験施設を用いた物質循環調査研究

(1) 水圏生態系構成に関する試験

生態系の基礎生産者となるアマモの移植試験の結果、アマモが根付いたことを確認した。また海水のろ過の有無が移植後出現する生物の多様性に大きく影響を与える結果を得た。微生物による生体構成元素の循環に関する試験では、アマモの葉が0.5mm以下の砕片になると微生物の分解が進むこと、枯死後に急激にバクテリアが増え分解が進行することが観測結果から判明した。

(2) 閉鎖系陸・水圏実験施設の機能試験

陸圏実験施設内の光量は、屋外における光量の30〜60%、積算光量の30〜40%であり、生態系を構築する上で補光する必要があることが分かった。水圏実験施設では海水処理系の作動試験を行い、概ね要求機能を満たすことを確認した。飼育槽の水中底面の光量は20〜60μmol・m-2・sec-1であり、アマモの育成には光量の増強が必要と考えられる。

1.6 閉鎖型生態系実験施設の要素技術の開発研究

(1)微生物利用有害ガス分解バイオリアクタに関する試験

閉鎖型生態系実験施設内にて発生する有機系ガスの中から、トルエンを分解除去の対象ガスとして選択した。5ppmのトルエンは天然土壌中微生物によりほぼ完全に分解され、また2ヶ月間の長期にわたり分解能力が維持された。施設内で発生するトルエンの濃度は、1ppmを下回ることから、今後低濃度の場合について検討することとした。

(2)生物系廃棄物処理技術の検討

閉鎖型生態系実験施設に動植物を導入し、閉鎖試験を行った場合に発生する有機物を主体とした生物系廃棄物の質・量的調査を行った。また、これら生物系廃棄物の生物学的処理技術の調査を行い、一次処理として、廃水は嫌気・好気活性汚泥処理、固形廃棄物は消滅型の高温好気性発酵処理、二次処理は高温嫌気消化処理、三次処理は理化学的な最終処理の構成により物質循環が構築できる見通しが得られた。

(3)実験施設制御に用いるシミュレーションソフトの検討

閉鎖型生態系実験施設の制御技術について検討を開始した。文献調査や閉鎖型生態系実験施設建設時の簡易なプログラムを用いた運用調査から、開発すべき制御技術の仕様を設定した。

1.7 低線量放射線の生物影響に関する調査研究

(1)微生物統御試験およぴ継世代影響予備実験

マウス飼育室をSPF条件(特定の病原微生物が存在しない条件)下に維持するために、定期的に微生物検査を実施した。その結果、マウス飼育室はSPF条件下に維持されていたことが確認された。

平成11年度に雄マウスに照射し、そのFlとF2を終生飼育する実験を開始したが、平成12年度もこれらのマウスの飼育を継続した。新たに雄マウス又は雌マウスに照射し、さらにそのFlとF2にも照射し、F3への影響を観察する実験も開始した。

(2)低線量率連続照射による晩発障害

平成7年度に開始した低線量率連続照射によるマウスの晩発障害に関する実験は順調に推移し、平成12年度末までに4000匹中3775匹が死亡した。平成12年度末までの成果をとりまとめると、本実験で最も高い線量率(20mGy/日)群に放射線の影響と考えられる寿命短縮が認められた。寿命短縮の原因としては、腫瘍の早期発生が示唆された。

(3)低線量照射の生体反応試験

平成11年度に引き続き、低線量率連続照射したマウスの骨髄細胞のサイトカイン遺伝子の発現量を調べた。さらに比較のために、高線量率1回照射の実験も行った。その結果、高線量率照射では遺伝子の発現量の増加が認められたが、低線量率連続照射では、発現量の変化は生じなかった。また、低線量率連続照射による脾臓中の造血幹細胞数の変化を調べたところ、8Gyで50%以下に減少していた。4Gy照射により減少した骨髄中の幹細胞数は、照射後6ヶ月の間に回復は認められなかった。

(4)低線量放射線の生物影響研究の将来計画に関する調査

当研究所では、将来計画として先端分子生物科学研究センター横想について、外部有識者とともに審議を重ねてきた。本構想は、動物実験の結果から人体影響を推定する科学的根拠を得ることおよび環境浄化の研究を推進することを目的とするものである。平成12年度は、平成13年度開始予定の低線量放射線細胞影響調査と低線量放射線遺伝子影響調査の2課題について、外部有識者による事前評価を受け、概ね妥当との評価を受けた。さらに当該調査を実施するための施設に関する基本設計書を作成した。

2.放射性物質等の環境影響等科学・技術に関する知識の普及・啓発

県民対象の講演会および大学や研究所のセミナー等10件に役職員を講師として派遣し、環境放射能等に関する知識の普及・啓発に努めた。

さらに、原子力安全委員会専門委員、青森県原子燃料サイクル施設環境放射線等監視評価会議等、国、地方公共団体等の委員会に17名の役職員が56件の兼職を行い、専門家としての協力を行った。

外部講師等による環境研セミナーを12回開催した。この環境研セミナーに、青森県および六ヶ所村の関係者数名を招待し、環境放射能等に関する勉強会を実施した。

国内からの来訪者延べ1,039名(133件)に対し、事業説明を通じて環境放射能等に関する知識の普及・啓発に努めた。

科学に対する人々の関心を高めるための活動を行い、その活動の一環として「環境研ミニ百科」を10回 刊行した。

また、科学技術週間とろっかしょ産業まつりにおいて環境研理科教室を開催した(入場者合計515名)。

さらに、村内の小学生を対象に冬期理科教室を開催した(参加者合計192名)。

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