研究報告(平成27年度)

はじめに

平成27年度においては、当研究所の主要事業としてこれまで行ってきた大型再処理施設排出放射能影響調査交付金事業に基づき、環境影響及び生物影響に関する調査研究を青森県から受託し進めている。それに加えて、国が進める福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の長期的影響把握手法の確立のための放射能測定を日本原子力研究開発機構を通じ受託し、環境省からは低線量率放射線長期被ばくによる生体影響の低減化に関する研究、極低線量率放射線連続被ばくマウスを用いた健康影響解析の研究を受託した。また、それらの調査研究に係る情報を青森県民に対して発信する活動を行った。さらに、大型再処理施設排出放射能影響調査交付金事業の成果と将来計画を評価するための企画評価委員会の運営を受託し、計画通りに実施した。加えて、大学・高専の学生に対して放射線の実習・講義等を行い、人材育成を支援した。その他に、研究領域の拡大や新たな調査研究の展開を目指して、研究所独自の自主研究を行った。

受託事業の概況

青森県からの受託調査研究事業、その他の受託調査研究事業及び自主研究について報告する。

1. 排出放射性物質の環境影響に関する調査研究

1.1 排出放射能の環境移行に関する調査研究

1.1.1 総合的環境移行・線量評価モデルの精度向上と拡張

大型再処理施設から排出される放射性核種による中長期にわたる現実的な被ばく線量を評価することを目的として、平成22年度までに開発した総合モデルの精度向上のために、これまでの調査で得られた放射性核種の形態別挙動及び地域の自然環境を考慮した放射性核種の挙動を組み入れるとともにパラメータの最適化等を行う。さらに、鷹架沼及びその集水域に関する放射性核種移行モデルを構築し、総合モデルを拡張する。

平成27年度は、鷹架沼及び鷹架沼集水域の放射性核種移行サブモデルの構築を行い、総合モデルへ組み込んで、水圏の計算領域を拡張した。また、総合モデルにパラメータの不確実さ伝播計算機能等を組み込み、モデル内で使用されているパラメータの感度解析を可能とした。さらに、大気拡散サブモデル内の大気拡散計算方法及び129Iの沈着パラメータを改良し、129Iの実測値と計算値の一致性を向上させた。加えて、大型再処理施設の安全審査に用いられた評価方法による陸域の計算結果と総合モデルによる計算結果を比較し、総合モデルによって妥当な計算結果が得られていることを確認した。

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1.1.1 総合的環境移行・線量評価モデルの精度向上と拡張(489KB)

1.1.2 総合的環境移行・線量評価モデルの検証

大気、降水をはじめとして陸域、湖沼及び沿岸海域から採取する環境試料及び日常食中の放射性核種濃度(3H、14C、129I等)を測定し、得られたデータを用いてこれまで構築した総合モデルを検証する。

平成23年度から継続的に調査を実施しており、平成27年度は、ほとんどの試料中の排出放射性核種濃度にバックグラウンドレベルからの上昇は認められなかったが、土壌や湖底堆積物等に大型再処理施設のアクティブ試験によって排出された129Iが残留し、その蓄積量に大きな変化は認められなかった。また、福島県における大気中137Cs濃度の大きな季節変化を説明するため、周辺の沈着密度と風向頻度で加重した再浮遊率を新たに導入した。さらに、福島県飯舘村の小河川における137Csの流出量は、沈着後早期に急減し、後には漸減していることを明らかにした。

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1.1.2 総合的環境移行・線量評価モデルの検証(376KB)

1.2 放射性ヨウ素の環境移行パラメータに関する調査研究

大型再処理施設から排出される129Iからの現実的な被ばく線量や環境中挙動を評価するには、放射性核種の移行を記述する各種のパラメータが必要である。そこで、現実的な被ばく線量評価用パラメータ及び土壌における浸透性を決定する移行パラメータ並びにそれらに与える環境因子の影響を明らかにして、放射性ヨウ素の環境移行予測の精度向上に資するため、以下の調査を行っている。

1.2.1 牧草におけるヨウ素のウェザリング係数

牧草の葉面に付着したヨウ素の葉面吸収、除去(ウェザリング)及び揮散の速度を物理・化学形態別に求める。

平成27年度は、無降水条件下における無機ガス状ヨウ素(I2)の葉面吸収及び揮散の速度をイネ科牧草の生長段階別に明らかにした。また、形態別に付着させたヨウ素の霧によるウェザリングに与える風の効果に関する実験を行い、ヨウ素の葉面上残存率と霧ばく露中の風速及び霧水密度との関係を明らかにした。

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1.2.1 牧草におけるヨウ素のウェザリング係数(353KB)

1.2.2 水産生物におけるヨウ素の形態別濃縮係数

海水中のヨウ素はI-、IO3-の化学形態をとることが知られている。海水から生物へのヨウ素の濃縮係数は化学形態により異なると考えられるため、青森県沿岸域の水産物(海藻等)を対象に、海水中I-、IO3-からの濃縮係数を室内実験により求める。

平成27年度は、海水からマナマコへの放射性ヨウ素の移行を明らかにするために、、125I- または125IO3-を添加した海水中においてマナマコを飼育して、マナマコ中125I濃度を経時的に測定した結果、125I-125IO3-に比較して濃縮されやすいことが判明した。また、XAFS測定によりマナマコ中の安定ヨウ素の化学形態を測定した結果、マナマコに含まれるヨウ素の大部分は有機態であることを示唆するデータが得られた。

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1.2.2 水産生物におけるヨウ素の形態別濃縮係数(425KB)

1.2.3 土壌におけるヨウ素の浸透性

土壌に沈着した放射性ヨウ素の一部は下方に浸透し地下水へ移行するため、放射性ヨウ素の土壌浸透性とそれに与える土壌特性、植生等の環境因子の影響を明らかにする。

平成25年度までに、六ヶ所村内2地点(二又、尾駮)の土壌(0〜50 cm)を対象に分配係数の測定を行い、ヨウ素の浸透速度を求めた。また、表層土壌の温度及び水分がヨウ素存在形態に与える影響を検討した。加えて、土壌中のヨウ素の存在形態に与える生物学的要因として植物根の影響を検討した。

平成27年度は、六ヶ所村内放牧地から採取した中層土壌コア試料(3−20 m)について、125Iを用いた分配係数(Kd)法により浸透速度を求めた結果、3 m以深で表層より2桁高い浸透速度を持つことが判明した。また、土壌における125IのKdの変動要因を解析した結果、有機炭素と125IのKdは正の相関を示すという新たな知見を得た。

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1.2.3 土壌中ヨウ素の浸透性(462KB)

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