研究報告(平成21年度)

平成21年度環境科学技術研究所年報から、「第Ⅰ部　概況」を転記するとともに、概況の各調査研究で報告の詳細にリンクしています。

はじめに

平成21年度においては、青森県から、放射性物質等の環境影響に関する調査研究として12件、及びそれらの活動に係る情報を青森県民に対して発信する活動1件を受託し、計画どおりに実施した。

受託事業の概況

I.放射性物質等の環境影響等環境安全に関する調査研究

1. 放出放射能の環境分布に関する調査研究

1.1 環境移行・線量評価モデルとパラメータの検証

「環境移行・線量評価モデル」並びにモデルに用いられている各種パラメータの検証を行うため、施設から排出される放射性物質の環境中における分布について調べた。平成21年度には、アクティブ試験に伴って排出された放射性核種（³H、⁸⁵Kr、¹²⁹I）のうち、大型再処理施設周辺の大気中³H濃度等を検証に用いた結果、モデルでは比較的良く実測値を説明できるが、やや過大評価となった。今後、パラメータの調整等を行い、検証を進める。

報告詳細: 1.1環境移行・線量評価モデルとパラメータの検証(826KB)

1.2 環境移行・線量評価モデルの高度化

大型再処理施設から排出される放射性核種を対象として、地域特性を考慮したより現実的な線量評価を行う「総合的環境移行・線量評価モデル」を構築することを目的とし、平成21年度は、大気拡散過程の精度向上のために導入した気象モデルの効果を確認した。尾駮沼に関するモデルの高度化を図るため、「尾駮沼集水域放射性核種移行モデル」による³Hと¹³⁷Csの挙動予測を可能とし、「尾駮沼高次栄養段階生態系放射性核種移行モデル」の魚類・底生生物の部分を構築した。更に、海洋放出口と尾駮沼河口域を含む六ヶ所沿岸海域モデルを構築し、機能を確認した。

報告詳細: 1.2環境移行・線量評価モデルの高度化(686KB)

1.3 パラメータの充実

1.3.1 放射性物質の形態間移行

微量元素の形態別分析に基づき、土壌内及び水中（淡水、汽水、海水）における排出放射性核種の形態間移行速度を求め、環境中での挙動予測精度向上を図った。平成21年度は、土壌に添加したCs、Iの形態変化と植物吸収に与える化学肥料の影響を調査した結果、Csは植物吸収が増加するが、Iでは変化しなかった。また、淡水域に生息する植物プランクトンを培養した淡水試料にヨウ素を添加したところ、ヨウ素の大部分が溶存態のままであり、プランクトンに収着されないことが判明した。

報告詳細: 1.3.1.1放射性物質の海水中における形態間移行と植物性プランクトンへの移行(770KB); 1.3.1.2土壌に添加したI及びCsの形態変化と経根吸収に及ぼす肥料及び土壌改良資材の影響(776KB)

1.3.2 作物葉面における挙動

植物の葉面に沈着した放射性核種の葉面吸収、転流に対する降雨の影響を明らかにするため、安定Cs、Srを含むエアロゾルを用い、大型人工気象室内において気象条件をコントロールした実験を行った。その結果、降雨により葉面上のCs、Srの一部が除去された。しかし、葉面上に残ったCs、Srの植物体内への吸収率が無降雨の場合より増加するため、結果的に、植物体内に吸収される量に大きな減少は見られなかった。

報告詳細: 作物葉面における挙動(770KB)

2. 天然放射能による被ばく線量に関する調査研究

自然放射線・天然放射性核種による青森県民の被ばく線量評価、また生態系の被ばく線量評価法の開発を行うことを目的とし、平成20年度に引き続き、六ヶ所村及び青森市において収集した日常食や食品の放射化学分析を行い、内部被ばく線量を推定した。更に、六ヶ所村の森林生態系に生息する哺乳類が受ける内部被ばく線量を推定するため、ボクセルファントムを作成するとともに六ヶ所村南部で中型ほ乳類を捕獲し、天然放射性核種身体負荷量を求めた。

報告詳細: 2.1天然放射線による青森県民と六ヶ所村森林生態系の線量評価(829KB)

3. 植物の元素集積性に関する調査研究

青森県の環境条件に適した植物による環境浄化対策に資することを目的として、土壌からのCs、Sr及びIの除去効率(面積当たりの収奪量)が高い野生植物としてオオイヌタデ等を選択するとともに、平成20年度に選択した栽培植物の最適栽培条件を決定した。また、すでに得られているCs耐性を持つモデル植物の2系統及び野生株にCs輸送関連遺伝子（AtCNGC17 ）を過剰発現させた形質転換植物を作製した。

報告詳細: 3植物の元素集積性に関する調査研究(724KB)

＜＜前ページ　　　　次ページ＞＞　受託事業の概況(2)

研究成果