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4.閉鎖型生態系実験施設における炭素移行に関する調査研究

4.1 炭素移行モデル作成試験
4.1.1 作物炭素移行モデル作成試験

大型再処理施設から排出される14Cの環境移行のモデル化、及び速度論的な被ばく線量評価に資するため、前年度までに大気中の14C濃度からイネ、葉菜、豆類、根菜の可食部及び牧草中の14C濃度を予測する数学モデル(コンパートメントモデル)を構築した。21年度は、異なる生育時期にあるこれらの植物に13CO2をばく露し、モデルの妥当性の検証を行った。この結果、構築した動的炭素移行モデルは、従来用いられている比放射能法に比べ、作物中の14C濃度をより的確に予測し得ることが明らかになった。

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4.1.1作物炭素移行モデル作成試験(758KB)

4.1.2 家畜炭素移行モデル作成試験

大型再処理施設の周辺地域で生産されている牛肉への牧草を介した14C移行を評価する予測モデルを構築するため、前年度に引き続き13Cで標識した牧草をウシに経口摂取させ、呼気、尿、糞、血液および筋肉への炭素移行データを収集した。また、牛乳への14C移行を評価するために同様の13C摂取試験を行った。これらのデータに基づき、ウシ体内での炭素代謝は2コンパートメントモデルで表現できることが明らかになった。さらに地域における飼育状況を考慮した14C移行係数を求め、現行の被ばく線量評価が十分な安全裕度を有していることを示した。

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4.1.2家畜炭素移行モデル作成試験(770KB)

4.1.3 ヒト炭素移行モデル作成試験

13C標識米及び大豆の摂取時の13C代謝試験を行った。この結果、前年度までに構築した三大栄養素(糖、アミノ酸、脂質)ごとの人体内炭素代謝モデル(3コンパートメントモデル)は、食物摂取時における14C代謝に適用できることが示された。さらに人体での炭素残留率は、被ばく線量評価のために国際放射線防護委員会(ICRP)が推奨しているICRPモデルによる推定値より低いことが明らかになった。この結果は、大型再処理施設の安全審査におけるICRPモデルに基づく線量係数を用いた被ばく線量評価は、大きな安全裕度を有することが示された。

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4.1.3ヒト炭素移行モデル作成試験(832KB)

5.閉鎖系陸・水圏実験施設における炭素等移行に関する調査研究

5.1 湿地生態系における炭素移行に関する試験

前年度までに、閉鎖系陸圏実験施設内に構築した湿地生態系において得られた炭素交換速度、植物バイオマス炭素量、土壌微生物バイオマス炭素量などのデータを基に、人工的湿地生態系における炭素移行・蓄積モデルを構築した。21年度は、このモデルによる炭素循環に関連する諸量の予測値と野外条件下での観測値との比較検証を行った。この結果、野外での観測値は空間的な変動が大きいものの、モデル予測値はその標準偏差内に収まることが確認された。これは、構築したモデルが湿地における短期的な炭素移行・蓄積を予測・評価する上で有効であることを示している。

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5.1湿地生態系における炭素移行に関する試験(838KB)

5.2 海草群落生態系における炭素移行に関する試験

閉鎖系水圏実験施設のアマモ群落における主要な消費者(ウニ)及び腐植質食者(ナマコ)の個体レベルの炭素収支データを基に、アマモ群落生態系での炭素移行に関する基本モデルを構築した。さらに、海草群落のアマモの全炭素量、枯死量等についてのモデル予測値を実験データと比較し、モデルの検証を行った。このモデルにより沿岸海域のアマモ群落単位面積当たり堆積物への炭素蓄積速度は約0.022g/d、アマモ炭素量に対する見かけの移行率は、1.3%/dと推定された。この推定値は、これまでに報告されている観測値の変動範囲内である。

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5.2海草群落生態系における炭素移行に関する試験(1.2MB)

5.3 トリチウムの海産生物への移行に関する試験

前年度に引き続き青森県の太平洋沿岸海域に生息している海産生物を対象とし、海水から海産生物へのトリチウム移行について重水素(D) をトレーサーとした試験を行った。21年度は、自由水型トリチウム(FWT) について、移行速度の塩分並びに水温に対する依存性を明らかにした。さらに、海産生物体内での有機結合型トリチウム(交換型及び非交換型OBT) の蓄積・排出を調査するため、 Dをトレーサーとする実験・測定系を確立し、交換型OBT に関する基礎実験を行った。これらの実験結果を基に、次年度以降の調査を実施する。

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5.3トリチウムの海産生物への移行に関する試験(752KB)

6. 微生物系物質循環に関する調査研究

6.1土壌における炭素の蓄積と放出の調査

バイオマスの再利用に伴う14Cの農耕土壌-大気間での挙動予測に資するため、13C標識稲ワラ等を用いて、水田土壌への稲ワラの鋤き込みや、畑地への稲ワラを材料とする堆肥の施用に伴う炭素蓄積に関する調査を行った。この結果、施用1年目の炭素残留率は水田で約50%、畑地では約60%であった。2年目以降の土壌中有機物の分解速度は遅く、水田で半減期約2年、畑地では半減期約3.5年と算出された。また、水田および畑地に施用された有機物中の14Cの極一部は、当該土壌で栽培された作物へ移行することが明らかとなった。

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6.1土壌における炭素の蓄積と放出の調査(697KB)

6.2 堆肥化による炭素挙動の調査

リサイクルバイオマスとして14Cを含む稲ワラを用いた堆肥化を行った場合の14Cの挙動を調べるため、13C標識稲ワラ及び家畜排泄物を用いて堆肥化し、含有有機物の組成並びに炭素残留率の経時変化を求めた。この結果、堆肥原料として再利用された稲ワラ中の易分解性有機物は、牛糞との堆肥熟成中に速やかに分解され、熟成日数30日で稲ワラ中の炭素残留率が50%程度に減少することが分った。また、畑地に施用された堆肥中の14Cは、難分解性有機物であるセルロース、リグニン及び一部が分解されたヘミセルロース中に残留すると推測された。

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6.2堆肥化による炭素挙動の調査(689KB)

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