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4.閉鎖系植物及び動物飼育・居住実験施設における炭素移行に関する調査研究

4.1 炭素移行モデル作成試験
4.1.1 作物における炭素移行データの収集

大型再処理施設から放出される14Cの環境移行のモデル化、及び速度論的な被ばく線量評価に資するため、18年度に行った主食である稲及び葉菜(コマツナ)に引き続き、豆(大豆)及び根菜類(大根)に13CO2をばく露し、生育時期による13C固定量の違いを明らかにした。

4.1.2 動物における炭素移行データの収集

ヤギに13Cでラベルした濃厚飼料(おから)を給餌し、呼気、血清、血餅、乳汁、尿、糞中の13C濃度変化から、13C代謝速度(排出速度)に関するデータを得た。これらのデータと前年度の調査結果から、乳汁への炭素移行に及ぼす粗飼料及び濃厚飼料の寄与率を求めたところ、単位量当たりでは濃厚飼料の寄与が大きいことが明らかになった。

4.1.3 ヒトにおける炭素移行データの収集

14Cによる被ばく線量評価に用いられる人体内の炭素代謝モデルを高度化するため、昨年度の糖類を対象とした試験に引き続き、三大栄養素の「蛋白質」摂取による炭素代謝を調べた。3人の被験者に対し、13C標識ロイシン及び13C濃縮豆乳を与え、呼気、尿、便、血液中の13C同位体比の時間変化を求めた。この結果、糖類摂取の場合と同様な2種の炭素排出速度が観察された。

4.1.4 総合炭素移行モデル作成試験

平成21年度に実施する大気−植物炭素移行モデルの有効性検証試験では、閉鎖系植物実験施設内の大気中13CO2濃度を任意の値に調整する必要がある。このため、閉鎖系植物栽培室内の大気13CO2/12CO2濃度比の時間的・空間的変動を抑え、植物に供給するCO2のδ13C値を十分な精度に調整する方法を確立した。

閉鎖型生態系実験施設内でのCO2濃度変動を解析するために開発した総合炭素移行モデルのシミュレーションプログラムを、今年度の物質循環・閉鎖居住試験で得られたデータに適用し、閉鎖系全体での炭素循環・移送量評価を行った。その結果、このモデルの妥当性及び今後の炭素移行実験への適用性が確認された。

4.2 実験系の運用技術開発
4.2.1 物質循環システム運用技術開発試験

閉鎖型生態系実験施設において、植物の非可食部や動物・ヒトの糞尿等の廃棄物からCO2や栄養塩を循環・再利用するため、炭化・燃焼法による廃棄物循環システム技術を整備して閉鎖居住実験に適用し、その機能実証試験を行った。その結果、2名の被験者、2頭のヤギから排出される廃棄物を4週間に亘って連続的に処理し、循環させることができた。

4.2.2 13CO2濃度制御技術開発試験

閉鎖系植物実験施設内で13CO2濃度を制御した実験を行うための予備試験を行った。二酸化炭素供給タンクに循環機能を付与することにより、植物栽培室へ供給する大量のCO213C同位体比を制御することが可能となった。

4.2.3 作物栽培運用技術開発試験

閉鎖型生態系施設における物質循環の割合を高めるため、廃棄物処理システムの燃焼残渣灰分からのミネラル抽出法の検討、及び排ガスから回収されるCO2を系内へ循環させ、植物栽培への再利用を図った。この結果、回収ガス中のVOC(揮発性有機化合物)や回収ミネラルによる植物生育への悪影響は認められなかった。

4.2.4 居住系運用技術開発試験

昨年度までの閉鎖居住実験の結果を基に、閉鎖系内における微量有害ガス濃度の低減化、菌叢の増加抑制をはかり、廃棄物処理及び再利用技術を確立し、最長4週間に及ぶ閉鎖居住実験を実施した。閉鎖居住実験期間中、CO2循環、水循環等は計画通りに実施された。また、被験者の生理・心理状態は良好に維持された。今年度の成果により、閉鎖型制御実験施設としての機能確認はほぼ完了した。

5. 閉鎖系陸・水圏実験施設における炭素移行に関する調査研究

5.1 湿地生態系構築と炭素移行に関する試験

六ヶ所周辺に広く分布しているヨシ群落生態系を閉鎖系陸圏実験施設内に構築し、大気から植物への炭素の移行並びに湿地における炭素の蓄積に関する予測モデルを作成するため、湿地からの二酸化炭素発生量の時間変化等の基礎データ収集を行った。また、得られた二酸化炭素交換速度、メタンフラックス等、炭素移行解析に必要な要素データを基に、湿地生態系における炭素移行・蓄積基本モデルを作成した。

5.2 海草群落生態系構築と構成生物の炭素収支に関する

海草(アマモ)及び底棲動物からなる海草群落生態系を構築し、個体レベルおよび群落レベルでの炭素移行に関する試験を行った。個体レベルの試験では、底棲動物の生理活性と水温の関係を明らかにし、個体レベルでの炭素移行に関する予測モデルを作成した。また、群落レベルの試験では、海草から底

6. 微生物系物質循環に関する調査研究

6.1 土壌における炭素の蓄積と放出の調査

大気-植物-土壌間での14C循環に関するモデル構築のため、土壌からの14C再放出に係る調査を行った。稲ワラを鋤込んだ水田及び牛糞・稲藁堆肥を施用した畑地での、土壌中炭素量及び気体状炭素量の調査を行った。土壌中の炭素量は、水田土壌では年間を通じてほぼ一定していたが、畑地土壌では季節変動が認められた。二酸化炭素発生量はいずれも夏季に高く、土壌中の温度及び微生物活性と相関していた。

また、13C同位体比を指標にして牛糞・稲藁堆肥の作成過程における炭素の挙動を解析し、堆肥熟成過程では稲藁由来の有機物の分解が優先的に進むことがわかった。

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