第2章 事業の内容 <<前ページ  1  2  3  次ページ>> 第2章 事業の内容(3)

1.4 閉鎖系植物及び動物飼育・居住実験施設における物質循環の調査研究

(1) 植物実験施設における物質循環に関する試験

居住生活に必要な収穫量と酸素発生量を確保するため、作物群落の段階栽培(シークエンス栽培)を実施した結果、現行の作物種では脂肪量が2名の実験主任者の要求量を充たせないことが判った。廃棄物を処理した溶液と使用済みの肥料廃液から植物栽培に必要なミネラルを回収できる見通しが得られた。また赤外線炭素(13CO2)分析計を使って、植物体内の炭素同位体を追跡できることを明らかにした。更に、窒素同位体の分別比を可食部−非可食部間で測定した結果、有意差がないことが判った。また、作物種により分別比が異なることを見出した。

(2) 動物飼育試験

閉鎖環境がシバヤギに与える影響を調査するため3週間の閉鎖系内飼育を行った際、行動観察・心拍数・唾液中コルチゾールホルモン濃度の追跡がストレスの判定に有用であることが判った。また、閉鎖系内作物の非可食部を飼料として利用するため稲ワラでの飼育試験を行った。稲ワラの裁断長は、2cm以下にすることが必要であることが判った。水処理システムについては、必要な量の浄化水生産能力を持っており、処理水の安全性も良好であることを確認した。更に、飼料・糞・尿及び呼気ガス中の炭素を定量した結果、シバヤギは、摂取した炭素の50%以上を糞で、約43%を呼気で、残りを尿で放出することが判った。

(3) 予備居住試験

実験主任者が日中 8 時間を居住区で過す、5日間の模擬的な予備居住実験を2 度行った。その際、生理や心理に平常時との差異は認められなかった。また、実験主任者が閉鎖系内で収集した心拍データと心拍と呼吸代謝速度の関係から、消費エネルギー量を求めた。植物栽培作業(1日約2時間)では300kcalであり、通常の 8 時間の労働では900〜1600 kcalの範囲であると推定された。栄養素の供給量については、イネとダイズを加工した際の栄養分析を行い、栄養素に関するデータを収集した。更に、閉鎖系内でのストレスの軽減を目的にサトウダイコンから水飴状糖液を製造する方法を確立した。

1.5 閉鎖系陸・水圏実験施設における生態系の構築に関する調査研究

(1) 水圏実験施設における生態系構築に関する試験

水圏実験施設内にアマモを中心とした海草群落の生態系を構築するための基礎試験を実施した。アマモ移植試験では、補光(350μmol m-2 s-1)により発根、生育が促進されることが認められた。アマモ発芽試験では、水槽内でも十分種子を発芽させることができることを確認した。また、アマモ場の生態系がどのような生物相からなっているかの基礎的なデータを取得した。

(2) 陸圏実験施設における生態系構築に関する試験

陸圏実験施設内の長期温度制御運転の結果、夏季と冬季は設定温度に極めてよく追随することを確認した。湿地域植生を施設内の栽培コンテナに移植し育成・管理した結果、観察した23種類の植物の生育に大きな問題はなく、施設内での植生の維持管理は可能であることが判った。

1.6 閉鎖型生態系実験施設の要素技術に関する研究開発

(1) 生物系廃棄物処理技術に関する試験

生物系廃棄物処理で重要な難分解性物質を含む固形廃棄物の処理法として、コンポスト(堆肥)処理で体積及び重量を減少させた後に高温消化処理で液化を行う方法について検討した。固形物は処理時間とともに一定の割合で減少することを確認した。一方、固形分の減少に伴う水相への固形分に由来する炭素の蓄積は認められず、むしろ処理後期に減少することが確認された。ガス化による大気中への移行を示唆しているものと考えられる。

(2) 有害ガス分解バイオリアクタに関する試験

生物的処理方法を用いた分解装置として、活性汚泥スクラバ法(有害ガスを水に吸収させ活性汚泥で分解)と担体充填生物脱臭法(被処理空気が担体充填層を通る間に担体表面の微生物により分解)を組み合わせたバイオリアクタを製作した。

また、平成13年度に製作したプラズマ分解実験装置の性能評価試験を行った結果、ヤギから発生する悪臭源化合物(吉草酸、イソ吉草酸、酪酸、プロピオン酸、硫化メチル)の臭気軽減が認められた。

(3) 霧発生制御技術に関する試験

陸圏実験施設の陸圏モジュール内において、既設の霧発生装置による霧の発生状況と気流に関する調査を行った。霧については、発生した霧の水滴径分布と水滴の移動速度分布を計測し、水滴径分布の経時変化、モジュール内各点における水滴径分布を解析した。

第2章 事業の内容 <<前ページ  1  2  3  次ページ>> 第2章 事業の内容(3)