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1.4 閉鎖系植物及び動物飼育・居住実験施設における物質循環の調査研究

(1) 植物実験施設における物質循環に関する試験

作物群落のシークエンス栽培において、油料作物を多く栽培することによって閉鎖系内居住者2名の主要栄養素要求を充足できることを実証した。ミネラル添加した廃棄物の物理化学的処理液を用いて候補作物コマツナを栽培できることも実証した。更に窒素固定設備の硝酸アンモニウム生産能力が植物栽培での必要量を満たせることを実証した。また、赤外線13C分析計を用いて植物体内の炭素同位体の分配比を評価できることを明らかにした。更に、大気中CO2濃度が増加すると窒素同位体分別が起こりにくくなることも見出した。

(2) 動物飼育試験

6週間の閉鎖系内飼育から、行動観察・心拍数・ホルモン測定が、閉鎖環境のシバヤギに与えるストレスの検出に有用であることが判った。また、低周波の環境音がストレッサーになる可能性が高いことが示された。閉鎖系内で生産される作物の非可食部の飼料への利用については、稲ワラ給餌による長期飼育では、タンパク質・脂質が不足するため濃厚飼料添加の必要性を認めた。グルコース、ガラクトースを用いた13Cトレーサー実験により、炭素の生物学的半減期が約2週間であることが判明した。シバヤギの炭素収支に関しては、検出装置の改良により長期データの取得が可能となり、摂取飼料中炭素の60%が呼気、33%が糞で、残りがメタンと尿とで放出されることが判った。

(3) 予備居住試験

2名の実験主任者が、日中8時間空気を開放した居住区に7日間、並びに日中8時間空気を閉鎖した居住区に5日間、居住した。更に、空気を開放した居住区に4泊5日の滞在も実施した。いずれの場合も、生理や心理に異常値は認められなかった。実験主任者の消費エネルギーについては、心拍数と呼吸代謝速度の相関を用いて施設内に24時間滞在時の心拍数から計算した場合も、生活時間調査の結果から計算した場合も、系内で栽培する作物から人体に供給できる量を超えないことが判った。更に、調理に必要な油を候補作物であるラッカセイから抽出する技術も確立した。

1.5 閉鎖系陸・水圏実験施設における生態系の構築に関する調査研究

(1) 水圏実験施設における生態系構築に関する試験

水圏実験施設内にアマモを中心とした海草群落の生態系を構築するための基礎試験を実施した。アマモ移植試験では、枯死海草を利用して底質の改善を行うことにより、水中ランプによる照射下で、4ヶ月以上の長期の育成を達成することが出来た。海草の分解に関する試験の結果、海草が分解に要する期間はおよそ5カ月から8カ月であることが判った。

(2) 陸圏実験施設における生態系構築に関する試験

陸圏実験施設内に湿地生態系を構築するための基礎資料となる、尾駮沼岸の湿地調査を実施した。沼側から陸側へと向かう水位環境傾度と代表的な植生について詳細な調査を実施した結果、ヨシが湿地生態系の優占種の1つであり、水位が植生分布と深い関係があることが明らかになった。

1.6 閉鎖型生態系実験施設の要素技術に関する研究開発

(1) 生物系廃棄物処理技術に関する試験

廃水処理装置の物質収支を調べるため、シバヤギ尿を試料として廃水処理性能試験を実施した。その尿中に含まれる有機態炭素は好気処理により90%以上が分解されることが確認された。また、分解処理装置より排出されるガスと水相中に残る懸濁物に含まれる炭素量の測定から、尿中の有機態炭素の40%及び60%が、それぞれガス相及び懸濁物へ移行したことが明らかになった。なお、40%のガス成分中の4分の1は二酸化炭素であった。

(2) 有害ガス分解バイオリアクタに関する試験

多種成分混合ガスの分解・除去の対策法に関する知見を得るため、プラズマ分解実験装置による酪酸及びプロピオン酸除去試験、並びにシバヤギ飼育小屋空気清浄化試験を行った。その結果、酪酸及びプロピオン酸は、プラズマ分解実験装置によってほぼ完全に分解除去されることを確認した。一方、同装置は、シバヤギ飼育小屋空気に含まれる化合物に対しては、効果は認められなかった。

(3) 霧発生制御技術に関する試験

陸圏モジュール内の流れ場・温度分布を、数値シミュレーションを用いて求めるためのシステムを確立した。本システムを用いて、平成14年度に実施した陸圏モジュール内の気流測定時と同じ条件で計算した結果、概ね計算と測定の結果が一致し、数値シミュレーションの妥当性が検証された。

(4) 乾燥廃棄物燃焼処理技術に関する試験

乾燥状態の廃棄物を安全かつ効率的に焼却する技術を開発することを目的とし平成15年度より研究を開始した。乾燥廃棄物燃焼実験装置を製作し、性能評価を目的とした試運転を実施した。加熱炉の昇温特性を設定温度200〜600℃で試験し、発生する一酸化炭素を燃焼するための触媒燃焼器の温度調節特性が良好であることを確認した。更に、600℃の運転条件で3種類の試料を焼却した結果、いずれも、ほぼ期待した結果を得ることができた。

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