第2章 事業の内容 <<前ページ  1  2  3  次ページ>> 第2章 事業の内容(3)

1.4 閉鎖系植物及び動物飼育・居住実験施設における物質循環の調査研究

(1) 植物実験施設における物質循環と炭素移行モデルの検討

シークエンス栽培を3ヵ月半継続し、この間ガス等の代謝量やバイオマス生産量をほぼ安定化させることに成功した。酸素の代わりに空気を用いたより安全な植物系の廃棄物処理設備の処理能力を把握した。また、Farquharの生化学的光合成モデルを作物群落に適用し、その光合成量の推定を可能にした。更に、ダイズの各部位間での炭素分配に及ぼす生育条件の影響について検討し、温度上昇は可食部、CO2濃度上昇は非可食部への分配を高めることが分かった。

(2) 閉鎖系内における動物飼育・人間居住技術に関する試験

空気循環ブロワーの低周波音に起因するシバヤギのストレス反応は、空気循環システムの運用法を変更し、静音化することによって抑制できた。エコノート2名、シバヤギ2頭を閉鎖型生態系実験施設内に入れ、数日に亘る予備居住実験を行い、系内のCO2濃度の推移について検討した。その結果、CO2濃度が設定上限値近くまで上昇することが分かった。安全性向上のため、CO2分離装置と廃棄物処理設備を改修する必要を認めた。シバヤギに13C標識グルコースをトレーサーとして経口連続投与した実験から、呼気、糞及び尿中の13C濃度は、いずれも約2週間で半減することが分かった。

(3) 閉鎖系内における居住関連技術に関する試験

実験主任者2名が空気は外気供給という条件下で1週間連続して滞在する実験と、外気供給を止め空気を循環させる状態で24時間連続して滞在する実験をそれぞれ2回実施した。現有の作物栽培面積の範囲内で2名の滞在に必要なメニューを作成できることを確認した。調理品の試食成績は良好であった。また、ラッカセイの搾油残渣から醤油様の調味料を30日で製造する方法を開発した。実験主任者の消費エネルギーに関する検討を進め、閉鎖系内外での作業分担案を策定した。乾燥トイレ使用時に環境基準は超えないもののNO2放出が観察されたため、NO2放出の抑制対策を考案した。また、施設内の菌種を調査し、調理後の清拭が衛生状態の保持に大きな効果を持つことが分かった。なお、第1次実験主任者は短期の閉鎖居住実験に必要な作業の習得を終了し、第2次実験主任者も基本的作業を習得した。

1.5 閉鎖系陸・水圏実験施設における生態系の構築に関する調査研究

(1) 水圏実験施設における生態系構築に関する試験

水圏実験施設内にアマモを中心とした海草群落の生態系を構築するための基礎試験を実施した。アマモの育成試験では、枯死海草を埋設した底質の改善により1年半以上の長期育成が可能となった。また、アマモ花株の形成が水温に影響されることを明らかにした。検討の結果、施設内にアマモを中心とする海草群落を構築できる見通しを得た。

(2) 陸圏実験施設における生態系構築に関する試験

陸圏実験施設に六ヶ所村の湿地生態系として重要なヨシ群落を構築し、炭素循環について検討することを目的とする。予備調査として、野外群落でのメタン発生量を測定した。ヨシ群落のメタン発生量は、地温と水位の上昇により大きく増加することが分かった。これは、通気組織を介して大気中へ放出される量が大きいことによると推測された。陸圏実験施設内でのヨシ予備栽培試験の結果、施設内における位置(日当たりや風当たり)の違いにより蒸発散量が異なるため給水方法に工夫を要するが、施設へのヨシ群落の導入に支障がないことを確認した。

1.6 閉鎖型生態系実験施設の要素技術に関する研究開発

(1) 生物系廃棄物処理技術に関する試験

有機廃棄物処理バイオリアクタシステムの各構成要素の能力を調査した。固形廃棄物処理では、ヤギ糞の高温嫌気消化処理により、リアクタ容積1リットル当たり1日に約0.3 gの炭素を分解または可溶化できた。廃水処理では、好気活性汚泥処理によりヤギ尿及び高温嫌気消化処理による消化液のいずれに対しても、容積1リットル当たり1日に約2gの炭素を分解でき、溶存性有機態炭素を90%以上除去し、CO2として約60%を回収することができた。これらのデータをもとに、生物学的な廃棄物処理システムを施設に導入する際に必要となる装置規模と炭素収支を試算した。

(2) 閉鎖系施設の予測制御技術に関する試験

施設の物質循環システムの運転を円滑に行うために、システムの挙動を予測し適切な操作スケジュールの決定を可能にする挙動予測システムの開発を進めている。施設のデータを提供するインターフェースシステム、運用スケジュールを提供するユーザ操作用プログラム、提供されたデータと運用スケジュールから挙動予測の計算をするシミュレーションシステムからなる挙動予測システムを製作した。

(3) 乾燥廃棄物燃焼処理技術に関する試験

乾燥状態の廃棄物を安全かつ効率的に焼却する技術を開発することを目的として、平成15年度に乾燥廃棄物燃焼実験装置を製作した。この装置を用いて、閉鎖型生態系実験施設に適用するための設計用データを取得する試験を実施した。その結果、本実験装置の約4〜5倍の処理能力が必要であることが分かった。

(4) 霧発生制御技術に関する試験

六ヶ所村の再処理施設周辺の気象現象として特徴的であり、放出が予測される放射性核種の大気からの除去に大きく影響する霧を、自然と同じメカニズムで発生させることを目的とする。霧発生時の水滴径分布と温湿度変化を調査し、施設内に霧を発生させる環境条件をシミュレーションにより検討し、霧発生試験装置の仕様を決定し製作した。

第2章 事業の内容 <<前ページ  1  2  3  次ページ>> 第2章 事業の内容(3)