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4.閉鎖系植物及び動物飼育・居住実験施設における物質循環総合実験調査

4.1 閉鎖居住実験

23種類の作物を連続栽培した植物系と、シバヤギ2頭と実験主任者2名を含む動物・居住系を結合し、外気を供給しない環境下で、1週間の居住実験を3回実施した。二酸化炭素と酸素については、系内濃度を計画範囲に制御することができた。しかし、乾燥トイレの運転に伴い窒素酸化物の発生量が増加したため、これを吸着除去する装置を試作し使用した結果、効果を確認できた。また、第2次実験主任者について、別途1週間の居住訓練を行い、必要な作業の修得を行った。これにより、次年度より4名の実験主任者が閉鎖居住実験に当たることが可能となった。

4.2 閉鎖居住長期化のための技術開発

全ての作物について、栽培養液の長期循環技術を確立した。シバヤギの閉鎖系内での長期飼育において、カルシウム不足については対策をとることができたが、脂肪不足については引き続き検討することとした。

4.3 閉鎖居住における安全確保技術開発

 1日1度の掃除機による清掃と、塩化ベンザルコニウムを用いた拭取り清掃(台所の床だけは1日2度)を行うことによって、1週間、外気を供給しない条件下で、施設内の菌叢が安定していたことを確認した

4.4 炭素移行モデル作成のための基礎データの収集

作物の群落レベルの光合成の温度依存特性を、従来、個葉レベルの光合成に適用されてきたFarquharの生化学的光合成モデルによって推定できることを確認した。また、13CO2に短期間曝露して光合成させた稲ワラをシバヤギに1週間給餌した後の呼気、尿、糞、および血中の炭素濃度から炭素の生物学的半減期を求め、前年度に得られているグルコースで与えた場合の生物学的半減期との比較を行った。

5.閉鎖系陸・水圏実験施設における生態系炭素移行に関する調査研究

5.1 海草群落生態系構築に関する試験

水圏実験施設にアマモによる海草群落生態系を構築して炭素の挙動を調べるために、施設に導入したアマモの管理手法を検討した。その結果、アマモの基礎生産量(=炭素取り込み量)と水温・光量との関係式を求め、一次消費者であるウニと巻貝によるアマモの摂食炭素量、排泄炭素量等の代謝に関する基礎データを取得した。

5.2 湿地生態系構築に関する試験

陸圏実験施設内にヨシ群落による湿地生態系を構築して炭素の挙動を調べるために、施設へのヨシ群落の導入方法を検討した。ヨシ群落の土壌中の全炭素・窒素含有量、微生物バイオマス炭素量、微生物活性の結果から、炭素循環調査を行うには、1 m迄の深さの土壌を陸圏施設内に導入すれば十分であること、ヨシ根茎を深さ30 cmの塊で掘削し、その下の土壌は、30〜50、50〜100 cmの2層に分けて層別に移植しても、フィールドでの条件を大きくかく乱することにならないことを確認した。

6.閉鎖型生態系実験施設の要素技術に関する研究開発

6.1 有機廃棄物処理バイオリアクタシステム開発試験

前年度までに開発したバイオリアクタシステムを用いて総合処理試験を実施した。その結果、固形廃棄物は高温嫌気消化処理により可溶化が可能であること、廃水及び高温嫌気消化処理で得られる可溶化消化液に含まれる有機物は、嫌気-好気活性汚泥処理により除去できること、及び、除去される有機物は、二酸化炭素、メタン等のガスとして回収できることを確認した。

6.2 有害ガス分解バイオリアクタ開発試験

閉鎖系内でシバヤギに由来する臭気成分を除去する装置を開発した、プラズマ分解と、プラズマ分解により水溶化した有害成分の吸収・分解を行うバイオスクラバ・活性汚泥層よりなるバイオリアクタの、2段階のシステムを連結して性能評価した。シバヤギ由来の臭気成分のピーク(GC/MS分析クロマトグラム)がほぼ完全に消失したことから、本システムが閉鎖系施設に適用できることを確認した。

6.3 閉鎖系施設の予測制御技術開発試験

閉鎖系施設の植物系および動物飼育・居住系の物質循環構成要素からなる物質循環システムの挙動予測シミュレーションプログラムを開発し、施設内各設備の状態を予測するシステム(挙動予測システム)を製作した。本挙動予測システムによるシミュレーション結果と試験設備の実際の挙動結果が良い一致を示したことから、物質循環システムを適切に運用するためのシステムとして使えることを確認した。

6.4 霧発生制御技術開発試験

陸圏モジュール内で、自然と同じメカニズムで霧を発生させることを目的とし、陸圏モジュール内の気流の流れ場・温度分布を、数値シミュレーションを用いて求めるためのシステムを作成した。これを用いて気流シミュレーションを行い、得られた凝縮霧の発生条件を実証するため、霧発生試験装置を用いて霧発生試験を行った結果、凝縮霧を発生させる事に成功した。

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