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3. 排出トリチウムの生物体移行に関する調査研究

大型再処理施設から排出されるトリチウム(T)による実証的な被ばく線量評価に資するため、トリチウムの代わりに同じ水素の安定同位体である重水素(D)を用いて大気−作物間、海水−海産生物間でのトリチウムの移行、生物体内での有機結合型トリチウム(OBT)の蓄積、及び人体内でのトリチウム代謝に関するデータを収集し、それぞれの経路におけるトリチウムの移行評価モデルを作成する。

3.1 大気排出トリチウムの大気−植物間移行パラメータに関する調査研究

大気中水蒸気状トリチウム(HTO)から植物の自由水型トリチウム(FWT) への移行パラメータ、植物体内でのFWTから有機結合型トリチウム(OBT)への移行・蓄積パラメータを実験的に求める。

平成23年度までの葉菜の調査に引き続き、平成24年度は、根菜(ハツカダイコン)を重水蒸気または重水を添加した養液にばく露し、根菜の自由水への重水移行速度を測定した。また、ハツカダイコンの各生育段階における光合成・呼吸活性及び各生育段階で生成された有機結合型重水素(OBD)の収穫時残存濃度を基に、根菜中トリチウム移行モデルを試験的に構築した。

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3.1 大気排出トリチウムの大気−植物間移行パラメータに関する調査研究(640KB)

3.2 海洋排出トリチウムの移行パラメータに関する調査研究

トリチウムの海産生物への移行・蓄積に関するパラメータ、特に海産生物におけるOBTへの移行・蓄積に関するパラメータを評価するための基礎データを、室内実験により収集する。

平成23年度の生産者(アナアオサ)から一次消費者としての動物プランクトン(モズミヨコエビ)へのOBDの移行に関する調査に引き続き、平成24年度は、アナアオサから底生動物(エゾアワビ)への食物連鎖によるOBDの移行・蓄積に関するパラメータを求め、エゾアワビのD代謝モデルを試験的に作成した。また、二次消費者(魚類)への食物連鎖を介するOBDの移行・蓄積パラメータを求めるため、ヒラメの個別飼育法を確立した。

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3.2 海洋排出トリチウムの移行パラメータに関する調査研究(541KB)

3.3 ヒト体内におけるトリチウム代謝に関する調査研究

ヒト被験者へ重水素(D)で標識した栄養素物質を経口投与し、Dの排泄データを収集するとともに、ラットを用いた動物実験によりDの特定臓器・組織への蓄積の有無や成長段階による水素代謝の違い等を調べ、経口摂取されたトリチウムの線量換算係数の基礎である人体内トリチウム代謝モデルに反映する。

平成23年度までに、D2O、D標識グルコース及びD標識パルミチン酸(食品に最も多く含まれる脂肪酸の一種)摂取後7日間のD排泄を測定した。平成24年度は、D標識パルミチン酸摂取後の112日間にわたる呼気と尿へのD排泄を測定するとともに、D標識アミノ酸(ロイシン、アラニン、グリシン及びリシン)摂取後7日間の同様のD排泄を調べた。その結果、パルミチン酸の一部は長期に渡り人体中に留まること、また、アミノ酸の種類によって代謝排泄の様態が大きく異なることが明らかとなった。

さらに、D標識アミノ酸(ロイシン及びリシン)をラットに投与し、所定の期間飼育後に解剖して、投与後100日間にわたる各器官・組織及び尿等の排泄物の試料を取得した。これらの試料を用いて評価したアミノ酸に含まれるDの肝臓等の臓器におけるD濃度半減期は過去の文献値とおおよそ一致していた。

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3.3 ヒト体内におけるトリチウム代謝に関する調査研究(558KB)

4.排出放射性炭素の蓄積評価に関する調査研究

大型再処理施設周辺地域における土地区分として代表的な森林、牧草地、水田、畑地及び湿地を対象に、施設から排出される炭素-14の植物体や土壌への蓄積・放出を推定・評価できる予測モデルを整備し、大型再処理施設稼動に伴う中長期の影響評価(環境への蓄積等)に資する。

平成23年度のチモシー採草地、ダイコン畑及び水田に引き続き、ニンジン畑における総一次生産速度と環境変数との関係を、閉鎖型生態系実験施設における炭素固定試験及び野外観測データを基に明らかにした。また、森林については、胸高直径と樹高の毎木調査及び落葉・落枝量の調査を継続するとともに根成長量の調査を行い、地下部を含めた純一次生産速度に関するデータを得た。その結果はこれまで報告されている数値の範囲内であったが、調査を継続し精度をさらに向上する必要がある。

また、平成23年度に各試験地に埋設した各対象植物の13C標識体を回収し、野外における易分解性有機物の分解速度定数を求めるとともに、実験室で易分解性有機物の分解速度定数の温度依存性を明らかにした。さらに、有機物の分解に関与する土壌微生物相を明らかにするため、各土壌からDNAを抽出する手法を確立し、メタゲノム解析ためのプライマーを設計した。

森林の放射性炭素動態を記述するモデルの開発では、コンパートメント構造とコンパートメント間の放射性炭素移動を記述する関数等を決定した。

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4. 排出放射性炭素の蓄積評価に関する調査研究(478KB)

5. 被ばく線量評価法及びα放射性核種に関する調査研究

排出放射性核種による被ばく線量の比較対照として、自然放射線に起因する青森県民の被ばく線量を評価するため、生活実態に沿った環境γ線線量率を求める。また、天然α線放出核種が身近な自然環境中に存在することを示すため、それらの環境中での分布を求める。さらに、大型再処理施設周辺の水圏自然生態系が受けている線量の評価法を開発する。

平成24年度は、むつ市の生活環境における環境γ線線量率を測定するとともに、日常生活での環境γ線線量率個人モニタリングを実施した。その結果、生活環境別の年平均線量率は、これまでにむつ市の人工物の少ない屋外で測定した年平均線量率とほぼ同等であったが、個人の環境γ線被ばく線量率の平均は、生活環境別の線量率及び生活時間統計値から推定される線量率を上回った。また、尾駮沼の二又川河口部における水中γ線線量率及びワカサギ中天然放射性核種濃度レベルを求めると共に、ワカサギの被ばく線量率計算に使用する簡易ボクセルファントムを作成した。さらに、六ヶ所村の畑地土壌、尾駮沼湖心部の堆積物における主要な天然α線放出核種は主に210Poであることを明らかにした。

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5 被ばく線量評価法及びα放射性核種に関する調査研究(249KB)

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