研究成果
受託事業の概況 ＜＜前ページ
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1.3 人体内における放射性炭素・トリチウム代謝に関する調査研究
大型再処理施設から排出される14C及び3Hによる被ばく線量をより現実的に評価することを目的として、 13Cで標識した多種の脂質及びアミノ酸等について、ボランティアへの経口投与実験を行い、精度の高い14C 代謝モデルを作成するとともに、水の代謝モデルと組み合わせて3H代謝モデルを構築する。
令和元年度は、平成30年度に13C標識ラッカセイ投与実験により得られた毛髪中13C濃度を測定した。ま た、13C標識ダイズを作製して投与実験を行い、呼気及び毛髪中13C濃度を測定した。これまでに得られた13C 標識ラッカセイ及びダイズ投与実験結果を用いて、平成30年度に作成した14C代謝モデルの検証を行った。 さらに、水の代謝モデルと組み合わせて3H代謝モデルを構築し、14C代謝モデルと併せて、それぞれの線量 換算係数を求めた。
1.4 陸圏における放射性物質蓄積評価に関する調査研究
大型再処理施設の稼動に伴い排出される14Cの土壌への蓄積性を評価するため、施設周辺に広く分布する クロマツ林におけるモデルを構築するとともに、排出量の多い3Hについて、各種環境（クロマツ林、牧草 地等）での土壌への蓄積モデルを構築する。
令和元年度は、牧草地及び畑地における土壌水の挙動を明らかにするため水文学的データの取得を継続 した。また、牧草体内での13C標識有機物の長期挙動を、平成30年度より継続して調査した。クロマツ林で は水文学的データ、炭素現存量及び炭素固定量関連データ、並びにリター分解速度関連データの取得を継 続した。令和元年度までに取得したデータに基づき、3H及び14Cの土壌有機物としてのクロマツ林、牧草地 等における蓄積を評価するモデルを構築した。
1.5 樹木の被ばく線量評価法の開発に関する調査研究
大型再処理施設周辺には放射線感受性が高いとされるクロマツが広く分布している。そこで、クロマツ の被ばく線量率を計算する手法を開発し、その手法を用いて自然被ばく線量率を求めるとともに、大気放 出される放射性ヨウ素によるクロマツの被ばく線量評価に必要なパラメータを安定ヨウ素により求める。
令和元年度は、調査区域から根部を含めたクロマツ1個体を採取して部位別形状、重量及び安定元素濃 度測定を行うとともに、周辺土壌中安定元素濃度の鉛直分布を調査した。さらに、これまでに得られた部 位別形状等のデータを基にしたクロマツ個体ファントムの作成と線量率の計算条件等の設定を行った。加 えて、クロマツ林内外の降雨雪や大気中粒子態及びガス態の安定ヨウ素濃度の測定を行い、大気中ヨウ素 のクロマツへの沈着速度等を求めた。
1.6 放射性物質の移行低減化に関する調査研究
大型再処理施設周辺の重要な作物である牧草を対象として、青森県の土壌で栽培した場合の放射性セシ ウムの移行に影響を及ぼす土壌要因を明らかにし、要因に応じた施肥や資材等による移行低減化手法の検 証を行う。さらに、青森県の主要農産物であるイネを対象として、玄米へのセシウムの転流を植物成長調 節物質や化学物質によって制御する手法を確立する。
令和元年度は、牧草を対象とした調査では、三八・津軽地域の牧草地土壌に137Csを添加して牧草を栽培 し、137Csの移行性と土壌特性との関連を調べた。また、平成30年度に137Csを添加した下北地域牧草地土壌 を用いて同様の栽培実験を行い、137Csの移行性の変化を明らかにした。さらに平成30年度に調査した下北 地域の牧草地土壌のうち137Cs移行性が高いことが明らかになった土壌を対象に平成29年度に確立した移 行低減化手法の有効性を検証した結果、カリウム肥料や放射性セシウム固定資材とリン酸施肥の併用が効 果的であった。加えて、イネにおいて、成長調節物質及び輸送体ブロッカー投与が玄米中セシウム濃度に 及ぼす影響を調査した。