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放射性セシウムの草地土壌での植物移行に関する論文掲載

 Journal of Environmental Radioactivityに当所の環境影響研究部 武田研究員の論文が掲載されました。掲載概要は以下の通りです。


「カリウムが肥沃な草地土壌における放射性セシウムの経時的な移行性低下に与える有機物施用の影響」

 土壌への有機物施用は、粘土鉱物への放射性セシウム(137Cs)の吸着を阻害する一方、カリウムを供給することにより植物によるセシウム吸収を抑制する効果もあるため、土壌−植物間の放射性セシウム挙動に複雑な影響を及ぼします。本研究では、交換性カリウム濃度が高く、有機物に富む黒ボク土における植物への放射性セシウムの移行性に与える有機物施用の影響を調べました。

 稲わら牛糞堆肥または無機肥料を施用した土壌及び無施用の対照土壌に137Csを添加し、人工気象チャンバー内で約1年にわたり乾燥−湿潤処理を繰り返し行いました。その期間中、牧草(オーチャードグラス)の小規模栽培実験を4回行い、137Csの移行性の経時的変化を調べました。その結果、対照土壌では土壌中137Cs濃度に対する植物中137Cs濃度の比である移行係数は時間と共に減少しました。また、堆肥を施用した土壌の移行係数は対照土壌に比べて高く、その減少もより緩やかなものでした。土壌中137Cs、NH4+、K+の抽出性と137Cs移行係数の関係を分析した結果、堆肥からのカリウム供給は植物の137Csの吸収抑制には効果がなく、逆に土壌から137Csの溶出を促進していることが分かりました。

 これらの結果から、交換性カリウム濃度が高い土壌では、有機物施用が放射性セシウムの植物への移行抑制に必ずしも効果的ではなく、長期間にわたり放射性セシウムの移行性を高める原因となり得ることが分かりました。


掲載論文

Akira Takeda, Hirofumi Tsukada, Yusuke Unno, Yuichi Takaku, Shun'ichi Hisamatsu. Effects of organic amendments on the natural attenuation of radiocesium transferability in grassland soils with high potassium fertility.
Journal of Environmental Radioactivity. (2020) DOI: 10.1016/j.jenvrad.2020.106207


関連ページ

放射性セシウム   (外部:排出放射性物質影響調査HP)


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