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2023年度
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再処理施設に隣接する汽水湖「尾駮沼」に関する論文が陸水学会誌に掲載されました
陸水学雑誌に当所の環境影響研究部の植田主任研究員の論文が掲載されました。掲載概要は以下の通りです。
「使用済み核燃料再処理施設に隣接する汽水湖尾駮沼における流況特性と海水交換の推定」
六ヶ所村には多くの沼がありますが、その中でも尾駮沼(おぶちぬま)は、使用済み核燃料再処理施設に隣接し、淡水と海水が混ざり合う汽水湖です。多種多様な動物・植物が生息・群生し、独自の生態系が形成されており、六ヶ所村民の象徴的な湖沼となっています。尾駮沼には再処理施設からの排水の直接流入はありませんが、六ヶ所村沖合の海洋に排出されたものが潮流によって流入したり、主排気筒から大気中に排出されたものが上流の集水域や湖面に直接沈着するなどによって付加されることが想定されます。その量は、ごくわずかでありますが、当研究所では長年にわたり、尾駮沼に関する調査を続けています。
本論文では、2020年8月1日〜12月10日の期間、尾駮沼内の塩分及び流況、淡水流入量・流出量、及び沼−海を結ぶ水道部の海水流入量に関する調査を行った結果を報告しました。尾駮沼の塩分は、変動はありますが平均すると海水の約3分の2でした。また、湖心部における平均流速は上下層ともに 90%以上が遅い流速(10cm/秒未満)でした。尾駮沼水道部においては 20cm/秒以上の速い流れが約60%を占め、同地点の海水交換が速いことが示唆されました。これらの知見は、再処理施設から排出される放射性物質の沼への流入出に関する基礎水理データとして活用されます。
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写真1. 尾駮沼から再処理施設を望む |
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図1. 青森県六ヶ所村の汽水湖尾駮沼の地図.丸印及び星印は,観測地点及び使用済み核燃料再処理施設をそれぞれ示す.実線は集水域を示す. |
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図2. 尾駮沼における湖心部(地点C)及び水道部(D地点)の2020年8月1日〜12月10日までの上層の流向・流速の頻度分布(円の中心(地点)を通過する流れの方向及び分布を示す) | |
*図1及び2は、陸水学雑誌に掲載された図を一部変更したものを引用 |
掲載論文
著者:植田真司(環境研)、東 麗緒菜(日本エヌ・ユー・エス)、落合伸也(金沢大学)、矢部いつか(東京大学)
タイトル:使用済み核燃料再処理施設に隣接する汽水湖尾駮沼における流況特性と海水交換の推定
雑誌名:陸水学雑誌(84巻2号: pp143-161, 2023年)
https://doi.org/10.3739/rikusui.84.143
関連ページ
再処理施設(再処理工場) (外部:排出放射性物質影響調査HP)