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土壌有機物の滞留時間の評価手法に関する論文が Environmental Research に掲載されました


「土壌有機物における安定性の簡便な評価手法としての強熱減量法の提案」

 土壌有機物(Soil Organic matter: SOM)は、大気中二酸化炭素(CO2)と比較して数倍もの炭素を貯留していることから、地球上において大気中CO2濃度を調節する機能を有しています。そのため、実環境における土壌有機物の滞留時間(ある場所に安定して存在している時間)を把握することは、大気中CO2濃度増加に起因した昨今の気候変動問題の程度を具体的に推定するために不可欠です。

現在、土壌有機物の滞留時間を把握するために一般的に用いられる手法は土壌有機物中の放射性炭素(14C)を測定するものです。これは、土壌有機物が生産された後、一定速度で土壌有機物中の14Cが放射性壊変により減少していくことを利用したもので、高い精度で土壌有機物の滞留時間を推定可能です。しかしながら、この14C法は費用や労力といった分析コストが高いという欠点がありました。

本研究では、14C法に代わって、段階的に温度を変えた強熱減量法(loss-on-ignition with a stepwise increase in temperature : SIT-LOI)によって土壌有機物の滞留時間を推定する手法を提案しました。強熱減量法はある温度および時間間隔で熱をかけた際に生じる試料の重量変化を利用し、その試料の成分や物理化学特性を推定する手法で、簡便かつ低コストで実行できる利点があります。日本各地で採取した土壌試料に対して得られた強熱減量法データと14Cデータを比較したところ、両者には強い相関が確認されました。

このことから、強熱減量法は14C法と同様に実環境における土壌有機物の滞留時間を推定する手法として利用可能であることが示唆されました。




掲載論文

Yuhi Satoh, Shigehiro Ishizuka, Syuntaro Hiradate, Mariko Atarashi-Andoh, Hirohiko Nagano, Jun Koarashi. Sequential loss-on-ignition as a simple method for evaluating the stability of soil organic matter under actual environmental conditions. (2023)
https://doi.org/10.1016/j.envres.2023.117224


関連ページ

炭素14      (外部:排出放射性物質影響調査HP)


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