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2024年度
福島河川水中の放射性ヨウ素の濃度変動に関する論文が国際学術誌 Journal of Environmental Radioactivity に掲載されました
当所の環境影響研究部長の植田主任研究員は、Journal of Environmental Radioactivity に下記論文を発表しました。論文の概要は以下の通りです。
「2016年から2020年の福島県東部河川水における福島第一原子力発電所事故由来のヨウ素-129 の濃度変動に関する研究」
福島第一原子力発電所事故に伴い、大量の放射性物質(放射性セシウム、放射性ヨウ素など)が大気中に放出されました。原子炉で生成されたヨウ素-129(129I)も放出され、その総量は 1.1ギガベクレルと推定されました。129I は事故で放出された放射性ヨウ素のなかでも長い半減期(約1570万年)を持つ放射性核種です。しかし、環境中に放出された129I に関する科学的知見は放射性セシウムに比べて少なく、特に河川水における129I 濃度の変動に関する研究は限られています。そこで、環境科学技術研究所では、福島県東部に位置する 11河川を対象に2016年から2020年にかけて基底流条件下(無降雨時の低水量の時)における水に溶けた(溶存態)129I 濃度変動を明らかにするとともに、各河川の溶存態129I 濃度を左右している要因について考察を行いました。
調査期間中、河川水中の129I 濃度の最高値は10-6ベクレル/リットル台、最低値は10-7ベクレル/リットル台であり、河川間で1桁以上の差が認められました。また、河川水中の129I 濃度と上流の集水域の平均129I 蓄積量との間に有意な相関関係があり、集水域の129I 蓄積量が大きい河川ほど河川水中の129I 濃度が高いことがわかりました。さらに、5年間にわたる各河川の129I 濃度変化は小さく、微量ではありますが長期間にわたり一定濃度の129I が水に溶けた状態で流出し続けることが予想されました。
これらの結果は、今後、六ヶ所村の再処理工場から大気中に管理放出される129I が集水域に沈着した後の環境中での動きを評価するうえで、役立つ知見となります。
掲載論文
Shinji Ueda, Hidenao Hasegawa, Yoshihito Ohtsuka, Shinya Ochiai.
Nuclear accident-derived 129I in several river water, eastern Fukushima, Japan, 2016-2020 (2025)
https://doi.org/10.1016/j.jenvrad.2025.107617
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